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イキガミ 2008 日本
東宝
ストーリー  “国家繁栄維持法”により若者の千人に一人が強制的に殺される架空の日本。その死亡予告書=“イキガミ”を配達する厚生保健省の役員・藤本がメジャーデビューを果たした元ストリート・ミュージシャン田辺翼、イキガミを選挙に利用しようとする保守系女性議員を母に持つ滝沢直樹、盲目の妹のために角膜移植を決断する飯塚さとし・・・
監督 瀧本智行
出演 松田翔太 塚本高史 成海璃子
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  監督、スタッフ、俳優たちのイキゴミを感じられる作品。
 作家星新一の初期作品「生活維持省」に内容・ストーリー・表現が酷似している著作権問題にまで発展しているとのこと。ファンが多い作家であるから問題はこじれそうな予感がしますが、戦時中の“赤紙”をモチーフにしていることや、死亡予告書を受け取った家族と本人という視点の差を考えれば、作品のメッセージが損なわれることのないよう穏やかに解決してもらいたいものです。
 原作も読んだことなければ、「生活維持省」だって知らないのだけれど、予告の段階で期待しまくりだった本作。何しろ、漫画が原作であるにもかかわらず、国家、政府を批判するかのようなテーマ、それに“イキガミ”を受け取ったら24時間で死ぬという重いテーマがあるのです。設定は架空の国であるが、“自由、平和、豊かな生活”に守られた国という現代の日本に通ずる世界。日本とアメリカが戦争していたことも知らない若者もいる現代において、とても受け入れられやすい設定になっているのはいいことだと思う。
 厚生保健省が管轄する国家繁栄維持法。単に人口を減らすために殺すのではなく、施行することによって命の尊厳を認識させ、犯罪や自殺者を減少させることが目的らしい。殺されるのは千人に一人なんだから、そんなに激減することはないだろう!などとバカバカしさに冷やかに鑑賞していたのですが、映画が終わるころには全く自然に受け入れられていた・・・これも洗脳というヤツか?と、架空世界に馴染んでしまった自分に驚き。これは驚愕の交通事故シーン以上なのかも。
 その映画自体の洗脳効果は死の宣告から24時間、若者たちが何をするか?という感動エピソードによって涙腺破壊されるためかと思います。第一エピソードでのTV生歌番組にて金井勇太演ずる元ストリートミュージシャンが歌う「みちしるべ」。いい歌だな〜などと歌詞の内容を吟味しながら第二エピソードへと移ると、保守系議員の風吹ジュンが演説する内容と若干リンクしてしまう。“生きるとは何だろうか?”という問いかけと“国家のため”と息子の死が誇りであると演説する姿が、下手すると同化してしまう危険もあるのだ。本来ならば感動せずに批判的に見なければならないのに・・・
 もちろん主人公の公務員藤本(松田翔太)は国繁に疑問を抱いてるし、劇団ひとりなんかは思想的に問題があるとして再教育させられる。『スカイクロラ』の記事でも書いたように“逃亡するか会社を破壊しにいく”ことは、徹底した思想教育があると思われることや予防接種が小学校入学時だというとで避けられないように思う。もし逃げるのなら親が子供を小学校へ入学させないようにするしかなさそうだ。
 成海璃子と山田孝之、そして金井勇太。彼らの演技に感動してしまったら、あなたはもう国家繁栄維持法支持者・・・とまではいかないにしても、こうした感動話で簡単に洗脳されるんじゃないかと空恐ろしくなる。事実、公式サイトのアンケート結果ではすっかり受け入れている中高生が見受けられるし、法律を作った政治家を殺しにいくなどといった意見は少数。千分の一という確率も絶妙だったのかもしれません。
 不満が残る点といえば、ワクチンの中の風吹ジュンが元思想犯だったという話なんて必要ないこと。設定が無謀すぎることもあって数あるツッコミどころは容認できても、さすがに成海璃子には“お前”とか“最高”とかって漢字は読めないと思う・・・
(2008.9)

活きる 1994 中国
角川書店=ドラゴンフィルム
活着 LIFETIMES
ストーリー  激動の中国に生きた一家の30年にわたる物語
監督 チャン・イーモウ
出演 グォ・ヨウ コン・リー ニウ・ベン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★
コメント  40年代、資産家の息子だったフークイだったが、博打好きが災いして屋敷を取られてしまう。妻のチアチェンは愛想を尽かし家を出るが、息子が生まれたため戻ってくる。心を入れ替え、得意の影絵で巡業するフークイだったが、共産軍・国民党軍の内戦によって捕虜となり、家に戻ってこれたのは内戦が終わってから・・・その間、長女が高熱により口がきけなくなっていた。
 博打でフークイの家を奪ったローアルが死刑となるなど、塞翁が馬のような話になるかと思っていたら、今度は長男に災難が降りかかる。一緒に巡業していた春生が車の事故で長男を撥ねてしまったのだ。長女が大人になり結婚し、幸せな家庭を築く・・・と思っていたら、出産の際に運悪く亡くなってしまう。箇条書きにすると、不運続きの一家といったイメージになるけど、生きる決意をしたのだから幸せはどこかにある!と、人間の力強さを感じるのです。博打好きの男が更生する様もさることながら、辛抱強く支え続けた妻のコン・リーがいい。
  

1994年カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリ、男優賞
1994年ゴールデングローブ賞外国映画賞ノミネート

(2008.7)

イーグル・アイ 2008 アメリカ
角川
EAGLE EYE
ストーリー  双子の兄の急死によりジェリーはいきなりFBI捜査陣に捕まってしまう。携帯電話にかかってくる謎の女の正体は?そして、同じくおびき出されたシングルマザーのレイチェルと出会い・・・
監督 D・J・クルーソー
出演 シャイア・ラブーフ ミシェル・モナハン ロザリオ・ドーソン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★★ ★★★ ★★★
コメント  グーグル・アイ!
 検索サイト最大手グーグルのストリートビューという機能は便利な反面、家の表札や人の顔、車のナンバーまで判別できることによりプライバシー侵害との批判も出ている。ハイテクが進むにつれ、それによる弊害も起こるのは常のことですが、軍や政府によって個人情報を読み取られる世界は恐ろしいものです。
 逃亡の連続アクションシーンにハラハラさせられ、謎が謎を呼ぶスリリングな展開のこの映画。1998年の『エネミー・オブ・アメリカ』にも雰囲気は似ていて、衛星写真や防犯ビデオにより常に監視されている社会。軍の監視は個人生活にも及び、嗜好や性格まで把握しているのだから、学歴やIQがどうあろうとも利用される可能性があるのだ。不運にも選ばれた主人公のシャイア・ラブーフとミシェル・モナハン。謎の女の指示に従わずに逃げ出そうとするとFBIの追跡も迫ってくる。そしてたどり着いた先は・・・というプロット自体が謎だらけ。
 家賃未払いに困ってたシャイア君。ATMで残高を確認すると75万ドル!と、普通なら喜んでもいいようだけど、双子の兄が交通事故で死んだばかり。部屋には自分がテロリストだと言わんばかりの軍事用機材が届いていて、さっぱりわけがわからない。そして同じように選ばれたミシェル・モナハン、謎の女の的確な指示・・・
 『エネミー・オブ・アメリカ』が9・11以前の作品だと考えると、テロリストをどう扱うかという視点にたつと、9・11以降の『イーグル・アイ』のメッセージが負けているような気もします(スピルバーグが10年間温め続けてきた構想と反論されたらしょうがないですけど)。それでも、テロリストよりも完全なコンピュータ管理社会のほうが怖いというテーマは新しいのかもしれません。もちろん、テロリストの存在をほのめかしておいて、実は・・・という展開はなかなかのもの。
 『マイノリティ・リポート』では時代を先取りしすぎたほど最先端テクノロジー映像で魅せてくれたスピルバーグですが、『インディジョーンズ』に力を入れすぎたためか、この映画ではDJ・クルーソー監督にまかせたおかげで、巨大コンピュータ“アリア”の雰囲気が『2001年宇宙の旅』以前に逆行してたかのような印象。他にも、セキュリティ技術や、衛星よりも防犯カメラを中心に添えたという点も新しいのか古いのか困惑させる原因だったかもしれません。
 シャイア君を選んだ理由がIQ180を超える兄の秘密に絡んでいるといった面白さもあったのですが、声が完全一致するはずもないだろうに・・・それに、凄いコンピュータなんだから生前の兄の音声を合成できそうな気もするし。と、疑問を挙げればきりがない。だけど、冒頭での誤爆が原因で“ギロチン作戦”を決行するアリアちゃんの性格は実に興味深い。『バイオハザード』のマザー“レッド・クイーン”とどちらがわがままなのかなぁ・・・
 「俺のパンツの中身に注意しろよ!」とヒントを与えてくれたビリー・ボブ・ソーントン。映画では執拗なFBI捜査官を熱演していましたけど、大怪我を負いながらも最期の勇姿には感動してしまった。

 楽器の特定音に反応する爆弾・・・最近、多いなぁ・・・
(2008.10)



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