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かあちゃん 2001 日本
東宝
ストーリー  飢饉によって貧困極まる天保末期。どろぼうが貧乏長屋に家に入った勇吉。居酒屋で酒を飲んでるとき、金を貯めているというおかつ(岸)の噂を耳にする。
監督 市川昆  原作:山本周五郎
出演 岸恵子 原田龍二 うじきつよし
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★ ★★ ★★ ★★ ★★
コメント  家具や金など何も置いてない家でどろぼうに入られたことをいいことに、大屋の店賃を待ってもらう言い訳にしようとした熊五郎(石倉三郎)。まるで落語のような展開。
 どろぼうに入った勇吉はいきなり起きていたおかつとでくわしてしまう。大きな息子が3人いるから静かにしておくれ・・・などと言って、驚く様子は一切無い。金ならちょっとは分けてやるよなどと諭そうとするが、そのうち何故金を貯めているのか話し出す。帰る家もない勇吉に一緒に暮らそうと切り出すおかつ。家族には遠い親戚の三男が職を失って頼ってきたと説明するのだった。
 盗みの罪で牢に入れられた大工の源さんの生活資金。他人の世話をするのが好きなかあちゃん。道徳の授業とか法話や説教の内容のようだ。勇吉にも手厚い態度で家族以上の付き合いをする。彼に対して唯一怒ったのが「親のことを悪く言った」ことだった。

2001年日本アカデミー賞主演女優賞
(2007.1)

母べえ 2007 日本
松竹
ストーリー  昭和十五年、東京。父と母、娘の初子と照美は互いに父べえ、母べえ、初べえ、照べえと呼び合う家族。ある日、文学者である父滋が治安維持法違反として特高に検挙されてから平和な家庭が一変する。
監督 山田洋次  原作:野上照代
出演 吉永小百合 浅野忠信 壇れい
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  君は母べえを見たか?
 今から30年ほど前、チョコベーというお菓子があった。不思議感のある画期的なCMがヒットしたためチョコべー遊びも流行ったし、友達の名前に“ベー”をつけて呼び合ったりするほどだったのです。残念ながら食べた記憶はないのですが・・・
 昭和十五年の野上家では、文学者である父親・滋(坂東三津五郎)のユーモアにより、互いに“べえ”をつけて呼び合っていた。その父親が思想犯として特高に検挙されるという悲しい内容にもかかわらず、家族は周りの温かな人たちに恵まれ、娘たちも明るくたくましく育っていく様子が印象的な映画でした。
 たとえば『はだしのゲン』のように、同じく反戦を唱えたために特高に捕まり、近所の人たちからも非国民扱いされて悲劇を強調する作品でもない。また、苦難を乗り越える強き母親像を表に出す作品でもないのです。物語の根底にある反戦思想は同じであるにしても、人間の温かさを前向きに捉えたような・・・特に戦争推進派(?)のような隣組の組長さん(でんでん)などはこの温かさを象徴するようなキャラクターでもあり、時には信念を押し殺してでも、人との絆がいかに大切であるかを丁寧に描いていました。
 主人公母べえを演ずる吉永小百合はすでに60歳を超えているのに、30代であっても違和感がない。型破りの叔父仙吉役である笑福亭鶴瓶よりもずっと若く見えるのです。さらに、サユリストをも満足させるかのような、世間知らずのお嬢様風であったり、男の好意に対する鈍感ぶりという一面も見せてくれる。そして、夫の元教え子である山ちゃんを演ずる浅野忠信がとてもよかったし、壇れいも『武士の一分』に続き好演。
 子役2人に関して、世間的には長女初子役の志田未来(みらい)の評判がいいようですけど、個人的には次女照美役の佐藤未来(みく)のほうがすごいと思った。自然に口の横にごはんつぶを付けるところや、コロッケを取るタイミングの良さや、カステラを我慢するところなど・・・演出の力なんだろうけど、上手くこなしすぎでした。
 全体的には原作者野上照代の自叙伝ということもあって、特高取り調べの拷問だとか戦争の悲惨さそのものは描かれていない。そして、衣装などが綺麗すぎることや子供たちも健康そうだったことなど、なぜか違う時代を見ている錯覚にも陥ってしまいました・・・それでも泣けましたが。
(2008.1)

怪談 1964 日本
文芸プロダクション・東宝
ストーリー 小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが書いた怪談の中から「黒髪」「雪女」「耳無芳一の話」「茶碗の中」の四篇を映画化したオムニバス作品
監督 小林正樹
出演 三國連太郎 岸恵子 新珠三千代
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  独立プロ製作でここまで大がかり。しかも1964年作品フルカラーでとても綺麗。俳優も当時の一流ばかりで凄い。
 黒髪、雪女では三國、仲代達矢が迫真の演技。ちょっとしたショートストーリー仕立てにはなっているけど、馴染みが深い話であるため印象深いエンディング。
 全体でも180分以上ある中、耳なし芳一はその半分くらいを占める。屋島の戦いから始まった映像。そして、幻想的な宮廷で琵琶を奏でる雰囲気は思わず引きずり込まれそうになるくらい。可哀そうな結末だと思ってたのに、最後はお金持ちになりましたとさ・・・と、ちょっとガックリきてしまう。

1965年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
1965年カンヌ国際映画祭審査員特別賞
(2008.8)

怪談 2007 日本
松竹=ザナドゥ
ストーリー  親の代の因果応報。煙草売りの新吉は三味線の師匠である豊志賀に出会い相思相愛の恋に陥る。しかし、新吉の親が彼女の父親を殺したという因果から呪われた恋へと・・・
監督 中田秀夫 原作:三遊亭円朝『真景累ケ淵』
出演 尾上菊之助 黒木瞳 井上真央
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★ ★★★ ★★ ★★
コメント  最も怖かったのが、お寺の前に立っていたお累の母親が透けて見えたことかも・・・
 何が起こるかわからない理不尽さをメインとした現代的なホラー映画に慣れ親しんでしまうと、日本特有の愛憎劇を中心とした怪談には恐怖以外のモノを感じ取ってしまう。これは、男に尽くすタイプの女性を振ってしまう男が味わう恐怖なのかもしれないし、男女とも愛しすぎると憎しみに変化してしまう恐れがあるのかもしれない。
 しかし、怖くなかった・・・現実に恋人と別れようとしている人にとっては怖い内容なのかもしれないけど、どこかで興ざめしてしまったに違いないのです。親の代の因果応報については、登場人物たちにはわかっていないこと、浮気性なわけでもない基本的には真面目な主人公新吉だけに、たまたま不慮の事故が引き起こした愛憎劇でしかなかったためかもしれません。むしろ、男の醜い欲が原因であったりすると、違った恐怖心が感じられたのでしょう。
 ストーリーそのものには不満ながら、新吉(尾上菊之助)を好きになってしまう5人の女性のそれぞれの愛情表現が楽しめました。直情的であったり、控えめであったり、強引で強迫めいたものだったり・・・演技の面はさておいて、男性視点でいくと、好みの愛情表現タイプで差が生まれそうなところも興味深いところです。
 世界各国でも上映されることが決まってるらしいですけど、欧米人の目に日本女性の愛情表現がどう映るのか。「死んでも尚愛し続ける」とか、「死んでから、他の女性と結婚するのは許せない」などといったストーリーはあるだろうから、それほどの評価を受けないのか・・・それとも、「日本人は未だに丁髷をしている」などと勘違いされるのか。
(2007.8)

回転 1961 イギリス
FOX
THE INNOCENTS
ストーリー  郊外の屋敷で暮らす幼い兄妹の元に家庭教師として訪れたギデンスは、そこで男女の幽霊を目撃する・・・
監督 ジャック・クレイトン 原作:ヘンリー・ジェームズ 
出演 デボラ・カー マイケル・レッドグレーヴ パメラ・フランクリン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★ ★★ ★★★ ★★
コメント  寄宿学校を退校となった兄のマイルス。その設定だけで不気味である。妹のフローラだけの時でも女性の声が聞えたけど、妹は聞えないふり。マイルスが戻ってきたら男の幽霊も見えてしまうようになったのだ。
 ギデンスが来る前に従者のクイントと前の家庭教師ジョセルが死んでいた事実。そして2人が愛し合ってたらしいと聞いたギデンス。やがて、2人の霊が兄妹に憑いているのではないかと疑うのだ。彼女はフローラをロンドンにいるおじさんの元へ送り、自分はマイルスに憑いたクイントと対決しようとするのだ。
 「名前を言いなさい!」と、それだけで退治できるようなイメージ。最後にはマイルスが死んでしまうのだけど、こんな展開じゃ面白くない。ギデンスにジョセルの霊が憑いて、マイルスと恋仲になるなどすれば、もっと面白くなったろうに・・・
 
1961年英国アカデミー賞作品賞ノミネート
(2007.10)

怪猫トルコ風呂 1975 日本
東映
ストーリー  赤線の全国廃止により、足を洗うことを決めた雪乃(谷ナオミ)であったが、恋人、鹿内(室田日出男)の借金返済のために、新装開店のトルコ風呂“舞姫”に出戻りするはめに。
監督 山口和彦
出演 谷ナオミ 室田日出男 大原美佐
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★ ★★ ★★ ★★★ ★★★
コメント  「しごきダコ」が出来なければ一人前になれない?
 赤線が廃止となって、嘆き悲しんだ団塊の世代よりもちょっと上のお父さん方。ドラマ「白線流し」をご覧になったであろう若きお嬢さん方。場内はまずまずの入りで、世代も多彩な観客が入り混じっての鑑賞となりました。
 トルコ風呂という名称が使えなくなって早20年。もちろん当時の成人向け映画だったので、観たくても観れない頃の映画でした。すぐに封印された映画なのでしょうか、フィルムも痛んでなくて、まさかデジタルリマスター版か?などと感じたくらい画質が最高でした。
 もちろんポルノ映画には違いないのですが、怪談をミックスして、笑いもあるし、スプラッター要素もあるという、贅沢な映画なのです。秋月という店で働いていた雪乃(谷ナオミ)は赤線が廃止となったことを機会に店を辞め、ヤクザな恋人鹿内(室田日出男)と一緒に暮らすことになったが、東北から状況した妹マユミも手篭めにし、博打で借金を作ったため、彼女は新しく作った“舞姫”というトルコ風呂に戻ることに・・・酷い男の代表格のような鹿内。女将とともに雪乃をリンチで殺し、壁に埋める。やがて、彼に姉が殺されたと思ったマユミがトルコ嬢となって店に探りを入れる・・・
 トルコ風呂社長の殿山泰司はなぜだか熱演。トルコ嬢トレイナーの山城新伍はとても楽しんでいたようだ。化け猫の姿は白装束で笑ってしまうほど。いつの間にか服を着てしまっているとかの不思議な編集には呆気にとられたし、黒猫の怪演は動物虐待ギリギリのところだと感じました。裸もたしかに多いけど、今の時代だったら暴力描写でR15になる程度だったかもしれません。
 「いらっしゃいませ」とギリギリの衣装でトルコ嬢が勢ぞろいするところも印象的。この冬公開される『大奥』もこんな雰囲気なのかな〜などと妄想していたら、“舞姫”の隣のトルコ風呂の名前が“大奥”だった・・・
 上映中、シネモンドの隣でパーティのバンド演奏がとてもうるさかったのですが、「負けじとパーティ会場にあえぎ声を流してやれ!」などと映画を応援してしまいました。無理だったかな。
(2006.11)



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