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マラノーチェ 1985 アメリカ
ワイズポリシー
MALA NOCHE  BAD NIGHT
ストーリー  オレゴン州ポートランドの場末の食料品店で働くウォルト。メキシコから不法移民の青年ジョニーに恋をして、同じくメキシコ人のロベルトとともに微妙な関係が続く・・・
監督 ガス・ヴァン・サント
出演 ティム・ストリーター ダグ・クーヤティ レイ・モンジュ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★  ★★★ ★★★  ★★★
コメント  ガス・ヴァン・サントの幻の長編デビュー作が公開された。
 映像は白黒。途中に8ミリカメラを手に入れて撮影するシーンがあるのですが、そのフィルムシーンとエンドクレジットの映像だけがカラーといったもの。ポートランドの詩人ウォルト・カーティスの自伝的小説を映画化した作品だ。
 ゲイであるウォルトがメキシコ人青年ジョニーに恋をするストーリーで、ジョニーとは言葉が通じずチグハグな関係を繰り返す。なんとか彼を抱きたいと思いつつも、ジョニーの友人ロベルトにカマ掘られ、「最悪な夜(マラノーチェ)だ」とつぶやくところが面白い。タイトルの意味はここではなく、最後に訪れるのですが、単純なゲイ映画とは思えない奥深いところがある。
 「移民局じゃない」と、メキシカンに警戒される中で必ず発する言葉。それだけ不法移民が多いということなんだろうけど、ろくな仕事にありつけるわけもなく、ヌードダンサー、男娼、そしてヤクの売人にしかなれない現実が物悲しい。それでも自由を求めて国境越えをする彼ら。儚い命を危険に晒してまでアメリカという国にやってくるのです。
 決してプロットを楽しむ映画ではなく、ウォルトの心象風景を繊細に描いた作品。映像の陰影の濃さのためか、ジョニーとロベルトの区別がつかなかったり、切り返しやモンタージュなどという編集を無視するかのような解りにくさもあったけど、嘆きとも思えるウォルトの気持ちが伝わってくる・・・
(2007.11)

マリー・アントワネット 2006 アメリカ
東宝東和=東北新社
MARIE ANTOINETTE
ストーリー  18世紀、オーストリアからフランスに嫁いできたマリー・アントワネット。世継ぎはまだかと周りから急かされながらも、贅沢三昧の生活を続ける・・・
監督 ソフィア・コッポラ
出演 キルステン・ダンスト ジェイソン・シュワルツマン リップ・トーン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★  ★★★ ★★  ★★
コメント  オスカル(oscar)が見えた?
 せっかくデュ・バリー夫人を前半のメインに持ってきているのにマリー・アントワネットとの確執がほとんど見えない。フランスとオーストリアの同盟が崩れ去ってしまうかもしれない!という危機的状況にもまったく緊張感がない出演者たちの演技。これじゃ何故メルシー大使がオロオロするのかわからないでしょう。もしかすると、アントワネットはデュ・バリーが娼婦だから毛嫌いしてたのではなく、ただ声をかけ忘れただけだったのかもしれない・・・と知らない人は感じるのかもしれません。長男の死亡を肖像画だけで表現していたのは面白かったのですが、知らない人はどう感じたのでしょうか・・・子供もいきなり増えてたし。
 マリー・アントワネットの存在はフランス革命が起こった一因でありますが、ソフィア・コッポラはこの時代設定やベルサイユ宮殿を舞台とした絢爛豪華な貴族社会にロック・ポップスを用いるという斬新さで臨みました。これこそまさに映画革命とでも言うべき手法だったとも言えるのでしょう。しかも、スイーツ好きの女性たちからも圧倒的な支持を得られると予測して、衣装の豪華さと涎腺を刺激する美味しい映像を盛り込んで攻めてきます。公開時期がもう少し早ければ不二家の事件も起こらなかったんじゃないかと思うほど・・・
 デュ・バリーもそうですが、ポリニャック公爵夫人の描写も弱いし、悪名高き首飾り事件も描かれてません。物語は、周りから世継ぎを急かされたアントワネットがその鬱憤を晴らすかのようにオペラ通いや賭博や夜遊びに興ずる様子が中心となります。世界史で最も贅沢で浪費家という彼女の姿だってそんなに感じられない、ただ普通の女の子が女王になっちゃったというディズニーのラブコメのような雰囲気なのです。ひょっとすると、最大の無駄遣い・浪費家はソフィア・コッポラ監督自身だったんじゃないかと思われるほど(映画製作費がどれだけなのかは知りません)。
 そうなってくると、ルイ15世はフランシス・フォード・コッポラを表していて、崩壊していくフランス・ブルボン王朝はコッポラファミリーそのものであり、ルイ16世にジェイソン・シュワルツマンを起用したのもその意図があったのかもしれない。こうなってくると、ニコラス・ケイジにも出演してもらいたくもなるし、スウェーデンのフェルゼン伯爵にはクエンティン・タランティーノを起用してもらいたかったところだ(無理か・・・)。平民の姿は最後のシーンまで全く出てこないほど王室視点を貫いていましたけど、さすがに最後には登場する。この民衆は映画の観客そのものであり、キルステン・ダンストの生まれながらにして女王であるような会釈によって評価を委ねられるのです。
 終わってみると、何を言いたい映画なのかさっぱりわからなかった。ポップな感覚の女王。無邪気な女王。外の世界など全くしらない純粋すぎる女王。バスティーユ牢獄がなぜ襲撃されたのかもわからない女王。単に新しい視点を強調したかっただけなのか。浪費家ぶりが靴やケーキやオペラだけだと弱すぎるし、他国の独立戦争に援助することの愚かしさを訴えたかったわけでもあるまい。それに、ソフィア・コッポラが日本に留学したこともあるのなら、「ベルサイユのバラ」が人気コミックであることくらい知っていてもよさそうなのに・・・残念だった。ロザリーだけでも・・・
(2007.1)

マリと子犬の物語 2007 日本
東宝
ストーリー  新潟県中越地震で多大な被害を受けた山古志村で、村役場に勤める石川優一とその家族。拾った子犬が3匹の子供をもうけた後に被災したが、救助に来た自衛隊ヘリに犬まで乗せることができなかった。
監督 猪股隆一
出演 船越英一郎 松本明子 広田亮平
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★  ★★★★
コメント  インコ、米、メダカ・・・米とはっきり言わないものだから、“肥溜め”かと思ってしまった・・・
 新潟県中越地震の実話をベースにしたハートフルドラマ。幼い兄妹と犬が中心となる、言わば“ずるい”作品には違いない。なにしろ予告編だけでも号泣してしまったので、2時間余の映画では涙も乾いてしまうんじゃないかと危惧していたのですが・・・やはり泣いてしまった。犬への愛情もさることながら、妹を想う兄の姿にも・・・
 普通ならばテレビ向けのこじんまりとした映像になるかと思っていたのに、ロケ地の設定だとか、大がかりなセットなど、それにCGの出来映えも見事なものでした。テレビ局が中心となって、自衛隊の協力や多くのボランティアの方の演技。そして子役の佐々木麻緒ちゃんの演技が凄すぎ!日本アカデミー賞助演女優賞は間違いないでしょう・・・
 さらに、錦鯉や牛の角突きなど、実際の山古志村を有名にしたエピソードもふんだんに取り入れリアルさを醸し出す一方で、久石譲の音楽により山間の村には郷愁を感じざるを得ない。全村避難という非常時と、死傷者以外にも錦鯉や牛の被害などは本当に大変なものだったに違いないのです。その牛や錦鯉を失った村民も、犬のマリには生きていてもらいたいと願う思いやりがあり、誰しもが自分の生きる勇気や村の復興のため犬に希望を託すところ。人間の生来の温かみが感じられました。
 今年は石川県でも能登沖地震がありましたけど、ほとんど何もしていない自分を恥じてしまいます・・・自分が被災したらどうするんだ?などと考えながら、幼少の頃、土砂崩れの被害にあったことまで思いだしてしまいました。
(2007.12)

Marines Go Home マリーンズ・ゴー・ホーム 2005 日本
森の映画社
ストーリー  ドキュメンタリー
監督 藤本幸久
出演 川瀬氾二 チョン・マンギュ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★   ★★★   ★★★
コメント  自衛隊は違憲!
 30年前はこの最高裁判決に世間が沸いたものだ。といっても、おぼろげな記憶しかないのですが、それ以来マスコミなどでも議論されることが全くないと言っていいほど自衛隊が世間に容認されているようです。最近のことを考えてみても、政府は海外派兵できるようにコツコツと既成事実を積み上げて、とうとうイラクにまで行ってしまいました。「戦争しに行くんじゃないんだ」と某首相が熱弁していたのも思い出されます。
 北海道矢臼別の陸上自衛隊演習場では、その広大な基地の真ん中に入植して40数年間住み続けている川瀬さんがいます。家の壁面には「自衛隊は憲法違反」と、そして日本国憲法前文と第9条が大きく書かれています。80数軒あった農家は皆強制撤去させられ、ただ一人残った川瀬さん。まさに最後の砦となりましたが、共感する人も増えていきそうで、ホッとしました。
 その川瀬さんを訪ねて交友を深めた韓国のチョン・マンギュさん。彼の住む梅香里は朝鮮戦争以来、米軍が射爆化してしまい、実弾演習が繰り返されてきた町。そこでは通常の弾丸に加え、劣化ウラン弾も射爆するという日本よりも悪い環境なのです。そして沖縄県辺野古では、米軍の基地を拡大するためのボーリング工事が行われようとしている中、反対する住民が座り込みや海上のやぐらを占拠したり抵抗を続けている。
 上記3箇所で行われている米軍撤退の切実なる住民運動が苦しみながらも徐々に効果を表す過程がスクリーンに映し出されるのです。韓国では最も成果をあげたようでして、在韓米軍の数がかなり縮小されたというニュースも記憶に新しいのですが、わが日本はどうなってるんでしょう?米軍への思いやり予算は減少することを知らず、「北の恐怖論」を展開するお粗末な著名人たち。これではますます軍備拡張しそうです・・・この映画の中でもチョン・マンギュさんが言っていた「北の恐怖は妄想にすぎない」という言葉が響いてきます。記憶力が悪いのに「北朝鮮の軍事費は13億ドル、韓国は150億ドル、日本は400億ドル」と覚えてしまいました・・・
 沖縄を舞台にした映画は最近多くなってますが、これほどウチナンチュの生の声を聞けるのは珍しいかもしれません。そして、三線を弾いていたお爺さんの右肘から先がなかったのには驚きました。
(2006.9)

マルサの女 1987 日本
東宝
ストーリー  税務署の女性調査官・板倉亮子はラブホテルのオーナー・権藤を執拗に追っていたが、なかなか尻尾をつかませてくれない。蜷川組も絡み、巧みな脱税にやきもき。ついに彼女は国税局に入ることになった。
監督 伊丹十三
出演 宮本信子 山崎努 津川雅彦
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★★
コメント  バブル期。悪い奴ラもボロ設けしていた時代。国税局調査官を“マルサ”と呼ぶことも初めて知った。最初に観た時には権藤の女が尻にティッシュをくっつけていたシーンがもっとも印象的だった。変なところでリアルにしてるんだなぁ・・・と。変なアングルと極端な演出、そして監督夫人を寝癖のついただらしないキャリアウーマンに仕立てたことが面白さを増してある。
 晴れてマルサの女になった板倉。税務署と国税局の雰囲気の違いに尻ゴミするかというところで、彼女なりに能力発揮。この微妙な心理状態を演ずるのがすごい。また、色んな隠し場所の面白さ。「特定関係人(2号)」という隠語も参考になった。芦田伸介の「蜷川だ」、大地康雄が「マルサのジャック・ニコルスン」も笑えた。
 ガサ入れの直前はドキドキもの。久しぶりに観たけど、面白い映画ですなぁ。赤穂浪士討ち入りの瞬間と同じ感覚になる。

1987年日本アカデミー賞作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、監督賞、脚本賞
1987年ブルーリボン賞作品賞
(2005.12)

マルサの女2 1988 日本
東宝
ストーリー  天の道教団の館長が地上げ目的で土地を買い漁っていた。
監督 伊丹十三
出演 宮本信子 津川雅彦 丹波哲郎
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  前回、名前だけ出てきた漆原という名前。地上げ屋と新興宗教が話題になっている時期でもあったし、かなりタイムリーな内容。加藤治子のヌードまで登場する。
 前作よりコメディ度、アクション度がかなりアップしている。写真週刊誌カメラマンがヤクザの指を数えて「4千5百万か」というところは大笑い。暗証番号が「マルサコワイヨ」も!ヤクザの嫌がらせ・脅しよりも、三國連太郎のほうが上手い。
 洞口依子はじめ、脱いでる女優さんが多い。また、三國連太郎のロリコン風スケベ親父の雰囲気がいい。亮子に東大卒の部下(益岡徹)がつくのですが、このキャラはあまり笑えない。
(2005.12)

マルタイの女 1997 日本
東宝
ストーリー  弁護士夫婦が殺された。現場を目撃し、犯人と格闘したのはビワコという大女優。犯人はカルト教団“真理の羊”だったため、警察は彼女に身辺警護を徹底するのだが・・・
監督 伊丹十三
出演 宮本信子 西村雅彦 村田雄浩
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★
コメント  拳銃で撃たれたときのドギツイ描写にはびっくり。血の噴出し方も異常なのだが、映画・演劇をモチーフにしているため仕方がないのかもしれない。
 『ボディガード』のパクリっぽいところや、所々色んな映画の影響を受けていそうな作品。カルト教団は完全にオウム真理教をヒントにしているのですが、台詞の中に「オウム真理教の麻原云々」とあり、一緒じゃないとアピールしている辺り、『ミンボーの女』でヤクザに狙われたという反省があるのかもしれない。
 証言を断念させるためビワコの不倫をマスコミに流すと脅されても動じなかったところでは、ちょっと感動。不倫相手の津川雅彦がまた美味しいところをかっさらっていく・・・保身よりも正義を選ぶなんてのは素晴らしいけど、実際にはそんな男はいないでしょうね。それよりも、カルト弁護士(江守徹)が現れるのなら、テープレコーダーくらい用意してもらいたいもんだ。
 ラストで裁判所に向かうビワコと刑事二人。山本太郎たちがバイクで追跡するシーンはちょっとやりすぎ。そんなの無理でしょうに。
 途中、中だるみがあったのも残念。もうちょっとコンパクトにしてあったら良かったなぁ〜
(2005.12)








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