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虹の女神 Rainbow Song 2006 日本
東宝
ストーリー  佐藤あおい(上野)が監督をする大学の映画研究会に誘われた岸田智也(市原)は男優として彼女の映画に出演する。共演の麻倉今日子(酒井若菜)を好きになっても、あおいは彼の恋の手助けをしたり、恋とも友情ともとれる関係が続いていたが・・・
監督 熊澤尚人 プロデュース:岩井俊二
出演 市原隼人 上野樹里 蒼井優
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★★
コメント  「あおいが死んだ」・・・などと予告編からネタバレしているこの映画。蒼井優が死んじゃうの?それとも宮崎あおいが・・・まさか、あおい輝彦が・・・・
 予備知識は市原隼人、上野樹里主演、熊澤尚人監督、そして「あおいが死んだ」という台詞だけだった。8章立てのストーリー。その第1章で悲惨な結末で始まるのでネタバレは避けて通れないところ。次章から過去の大学時代へと移り、人間関係が明かされていく展開となっています。その過去の映像がスクリーンに映し出されると、まさに岩井俊二ワールド全開となっていて、監督の名前を忘れてしまいそうになりました。
 予告編のキスシーンからは想像もつかないような純情さ、不器用な恋愛。デジタルな世界とは無縁であるかのように8mmでの映画にこだわり、夢を抱き続ける上野樹里と、恋愛には鈍感な市原隼人。どちらかというと、今風の大学生ではない印象もあり、素直な言葉で表現できない様子には、つい「バカだな、女心に気づけよ」などと渇を入れたくなってしまうほどでした。特に市原くんは「あの子もいいな、この子もいいな」と移り気な性格のために、放っておくと本命の女の子を取り逃がしてしまうタイプ。大きな夢も持っていないし、企業に就職することに対しても疑問を感じてる様子でした。しかし、なぜか彼の恋愛に対する気持ちが自分の昔の性格にオーバーラップしてしまい、応援したくなってくるのです。
 水たまりに映った虹や紙幣の指輪などの小技を効かせ、上野樹里が職場を辞める穴埋めに市原隼人が入るという伏線が面白かったし、佐々木蔵之介と尾上寛之のカメラオタクぶりや相田翔子の存在もコミカルな演出が見事な隠し味となっていました。そして、屋上でのやりとりは二人の表情が秀逸。「バカ!そこだ。気づけ!この野郎!」と市原に対して叫びたくなる気持ちは、『男はつらいよ』において寅さんが告白されてるのに気付かない様子と一緒だからなのでしょうか、とにかくバカです・・・蒼井優もそう言ってましたから間違いないです。
 この秋、切ない系の映画が数多く公開されますが、今のところ切ない系では1番かもしれません。岩井俊二が好きな人におすすめ。嫌いな人には無理です・・・
(2006.10)

西の魔女が死んだ 2008 日本
アスミック・エース
ストーリー  中学に入って不登校になったまいを心配して、母親が田舎暮らしを続けている祖母の元へ預けた。おばあちゃんはイギリス人。魔女の血を引くと言われ、自分も魔女になりたいと修行にはげむ・・・
監督 長崎俊一 原作:梨木香歩
出演 サチ・パーカー 高橋真悠 りょう
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★
コメント  木村祐一さん、指がナメクジに見えた瞬間が大好き!わいの?
 原作が135万部を超えるロングセラーだということも知らなかったため、宮崎駿作品の実写化だと思っていた。なんとなくスローライフと少女の成長物語だろうと映画の序盤でわかるし、結末もタイトルが示してるんだから・・・と、想像しながら。だけど、最後には思いっきり心揺さぶられました。これほど優しさに満ち溢れた内容だったなんて・・・
 実は南アルプスを背景にした変則三車線の道路の映像を見て、危うく大事故になりそうだったことを思い出してしまいました。なぜか最初から土地や自然に対して感情移入してしまいます。そうすると、不登校の少女まい(高橋真悠)の気持にも溶け込んで、いつしか自分のおばあちゃんの思い出もこみあげてしまい・・・涙腺、やられました。
 “扱いにくい子”とママに言われたショックはおばあちゃんとの暮らしですぐに癒されたまい。数々のハーブ、ラベンダー、野いちごのジャム作り、ケータイもテレビもパソコンもない、すべてがカントリーライフ。ストーリーそのものだってスローペースなのだ。そして、必ずまいのことを褒めてくれるおばあちゃん。実は魔女の家系だと告げられても、自然に受け入れることができる。
 児童文学なんだし、かなり少女向けかと思ったけど、おばあちゃんの言葉にはかなり重みがありました。特に飼っていた鶏が何者かに殺された後、ゲンジ(木村)が犯人だと直感するまいに説く言葉には、人と人との付き合いのマナー以上に憎しみを否定し、反戦平和を訴えていると感じられるのです。
 おばあちゃん役のサチ・パーカーはシャーリー・マクレーンの娘。日本語がぎこちないながらもペラペラなのでまさに適役。高橋真悠は大女優になる素質十分で、第二の蒼井優の雰囲気だ。父親役の大森南朋も意外とツボ。そして手嶌葵が歌うテーマ曲「虹」にもやられた。歌詞の中で“虹”という部分に差し掛かると、ちょうどエンドロールで「虹」と出てくるんです・・・狙ってたのか?

(2008.6)

22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語 2006 日本
角川映画
ストーリー  福岡の商社に勤める川野は煮え切らない関係の有美(清水美砂)と上海の転勤について話していた。帰り道の公園で、コンビニをクビになった花鈴(鈴木)に援交を申し込まれる・・・彼女の身の上話を聞くにつれ衝撃を受ける川野。それは22歳のときに別れた恋人葉子にまつわることだった。
監督 大林宣彦 原案:伊勢正三
出演 筧利夫 鈴木聖奈 中村美玲
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  1960年代症候群とは、晩婚・非婚・少子化。団塊世代と団塊ジュニアにはさまれた微妙な立場。今ならアラフォーと呼ばれる世代なのか。閉塞性無精子病と診断された川野(筧)。子供を産みたい女と産みたくない女と会話したわけだ。若い花鈴は川野と同郷の大分。そしてかつての恋人葉子が死んだ時の嫁ぎ先と同姓だったのだ。
 キスさえしない中年と21歳の女性のお付き合い。それでも花鈴は上海についてくると言う。花鈴はボロアパートで同級生浅野(窪塚俊介)とルームシェアしてたのだ。しかし、浅野に会ってみると、彼もまたキスさえしてないと言う。同じだ・・・川野は22年前の別れのシーンを思い出し、自分が身を引く決心をする。会社に辞表。年収1500万を棒に振るほど決意が固かったのだ。
 彼岸花、“葉見ず花見ず”とも呼ばれる赤い花。母娘に関わった川野。伊勢正三の「22才の別れ」の歌詞がそのまま重なるところではドキリとする。エンドロールでは伊勢正三のプロモーションビデオ風。彼のファンならば楽しめるはず。
 冒頭のセリフから想像すると、かなりエロい内容になるかと思うのですが、途中からは完全なプラトニック・ラブストーリー。はっきり言って、基本の筋はつまらないのですが、就職難であるとか、格差社会であるとか、社会問題もちりばめられている。年収100万のフリーターで、飯も食えないなんてかなり深刻・・・
 大林監督の意味のない斜め映像も健在!大分3部作の第2作。多分3作目も不安定になるんだろうな。
(2009.1)

20世紀少年 2008 日本
東宝
ストーリー  1969年。同級生の仲間と秘密基地で遊んでいたケンヂは20世紀の終りに人類滅亡を企てる悪と戦う“よげんの書”を書いた。1997年、コンビニで働くケンヂは、正体不明の“ともだち”と呼ばれる教祖がその惨事を実現しようとしていることに気づく・・・
監督 堤幸彦 原作:浦沢直樹
出演 唐沢寿明 豊川悦司 常盤貴子
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  王様おにぎりを食べてみたかったのに・・・焼けちゃったのね。
 ストーリーはともかく、小ネタが美味し過ぎる上に、主人公ケンヂたちと同年代であるため、懐かしさいっぱいでの鑑賞となりました。60年代の研ナオコの駄菓子屋やウルティモマンもそうだけど、基本となる彼らの秘密基地!それにアポロ月面着陸やウッドストック・コンサートなど、時代を象徴していました。 20世紀末にしても、オウム真理教からヒントを得たカルト集団など世紀末思想に支配されていた若者像など、「ああいう奴もいたな〜」などと懐かしく思えるほどでした。
 テーマ曲はTレックスの「20th Century Boy」。そのリーダーでもあるマーク・ボランは29歳という若さで他界しているが、ケンヂ(唐沢寿明)の言葉にもあるようにジム・モリソン、ブライアン・ジョーンズ、ジャニス・ジョップリン、ジミ・ヘンドリックスといったロッカーたちは皆27歳で亡くなっているのだ。27歳で死ななければロッカーじゃないという焦燥感にも似たロックの憧れも、音楽を捨ててから「年をとっても続けているロッカーがいる」という考えに変わる伏線もなかなか良かった。ちなみにコンビニののぼり旗にプリントされていたのは「深紫伝説」で一世風靡した王様ですよね・・・
 工科大教授一家の失踪事件や細菌兵器事件。現場に残された目玉と人差し指のロゴマークは不気味ではあるけど、なぜかフジテレビのマークの雰囲気があった(映画は日テレ出資)。そして、事件にはすべて“ともだち”を教祖とする新興カルト宗教が絡んでいて、ケンヂの仲間・ドンキーがビルから墜落する事件も発生。秘密基地で語った“よげんの書”が実現されつつあったのだ。
 誰が教祖なのか?教団がケンジの姪っ子カンナを狙うのは何故?幼心で語った荒唐無稽な計画なんて実現できるのか?と、サスペンス要素と冒険アクションが少年時代の回想を絡めて緊迫感を醸し出す・・・はずだったけど、さすがに三部作の第一章ということもあって、どことなく盛り上がりに欠ける。
 堤監督だからしょうがないと思えば、それでいいのだけど、「ハリウッド監督に依頼すればいいのに」といった意見はどうかと思う。何しろ集団で人差し指を立てる仕草は、中指を立てる行為と似ているから、アメリカ人にとっては印象が全く違うような気がする。
 原作を大人買いしようと思っても書店には置いてないし、現時点では未読。原作そっくりの雰囲気でキャラクターそれぞれも似てると評判だし、なにしろ俳優が豪華なのです。少年時代と世紀末で誰が誰だかわからないかもしれないけど、子役も似ているために主要人物は把握できました。それにしてもケンヂが目撃した“ともだち”は誰だったのか、時限爆弾のスイッチを切り忘れるほどショッキングだったのだろうけど・・・次回作が待ち遠しい。
(2008.9)

20世紀少年<第2章>最後の希望
2008 日本
東宝
ストーリー  2015年、血の大晦日でテロリストとされたケンヂ一派の姪カンナは同級生の小泉響子(木南晴夏)とともにともだちランドに行く。一派の生き残りであるヨシツネ(香川照之)の助けもあり、1971年の理科室までたどりつくのだが・・・
監督 堤幸彦 原作:浦沢直樹
出演 豊川悦司 平愛梨 常盤貴子
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★ ★★★ ★★ ★★
コメント  常盤荘の管理人は常盤タカコ
 第1章を観てから我慢できなくなって原作漫画を読破した。ともだちの正体も理科室の謎もわかってしまうと、映画の興味は常盤荘の管理人とユキジ(常盤貴子)がどう対面するかという一点のみ・・・しかし、名前が書かれていただけ。愕然としてしまい、原作にはない小ネタ探しに集中するも、忠実にストーリーを追うばかりのダイジェスト版のような作りにがっかりさせられた。
 原作を読んでみたからといって好きになったわけじゃなく、映画化されるとしたら、このシーンがメインになるんじゃないかと想像してみたり、漫画キャラにそっくりだと好評だったキャスティングに期待した程度です。2015年の新たなキャラ、小泉響子(木南晴夏)などはそっくりすぎて驚いたし、そっくりじゃないのにピタリとはまっていたサダキヨ(ユースケサンタマリア)にも満足できました。それに本物のトヨタ2000GTにも感動(でも炎上しないのね)・・・
 公開前日に日テレ系で『もう一つの第1章』なるダイジェスト版が放映されましたが、カンナのナレーションで進むというあくまでも第2章を観るための宣伝版であり、“未公開シーン”を楽しむより、カットされまくりで意味不明だったのが残念でした。登場人物名やキャストを復習するには最適だった程度です。
 そんな万全の態勢で臨んだ第2章。予想ではバーチャル世界での理科室とオッチョ(豊川悦司)たちが向かう理科室がクライマックスになるのかと思ってたのですが、これがあっさり描かれ、ともだちのパレードという別のクライマックスを用意してありました。漫画は読んでいてもハラハラドキドキさせられたのに、なぜか面白くない。バーチャル世界と現実世界を同時に描くことによる混乱を避けるための脚本かと思うけど、原作の構図そっくりに撮ることも裏目に出てしまったのかもしれません。そんな中、もっとも面白かったのがお面を取るとユースケサンタマリアの顔だったというシーン・・・あまりにも予想通りだったので笑ってしまいそうになった。
 原作で好きだったのが、カンナがカリスマ性を発揮してローマ法王暗殺計画を阻止すべくタイマフィアと中国マフィアをまとげあげるところでした。これもクライマックスとして成立する部分なのに、ローマ法王が訪日する気配すらありませんでした。そして最大の謎“ともだちの正体”も明かされない・・・まぁ、これは第3章まで引っ張るつもりだろうからしょうがないか・・・
 パレードで暗殺されたともだちが3日後に復活し、キリスト以来の神の誕生劇。本来のともだち(誰かは明かされない)は死んでしまい、第2のともだちが成すますという展開になっていくはずですが、復活したともだちの声がユースケサンタマリアだったような気がしてなりません。サダキヨが死んだという事実もないし、もしかすると原作とは違う結末になるのかも・・・
(2009.1)

尼僧物語 1959 アメリカ
WB
THE NUN'S STORY
ストーリー  ベルギーの尼僧ガブリエラはコンゴの植民地で医療活動を続けていたが、第二次大戦で父を失った彼女は次第に教会との対立を深めてゆく・・・
監督 フレッド・ジンネマン
出演 オードリー・ヘプバーン ピーター・フィンチ イーディス・エヴァンス
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★★ ★★★ ★★★
コメント  冒頭から数十分間、家族との別れから教会での洗礼の儀式が続く。神々しさと神秘的な尼僧の集まる雰囲気はなかなかよい。淡々と続くストーリーは飽き易く、スチームサウナで拷問のような扱いを受けていたシーンが印象的。さすがにオードリーはそんなことはされない・・・
 コンゴ行きが決まってからはまるでドキュメンタリーであるかのようにアフリカの原住民たちとの交流、そして医療活動。葛藤の場面もあるが、それほど痛々しくもないので、やはり淡々とずっと続く。
 戦時中、シスターが戦況を伝えていくシーンでは胸が痛む。家族はどうなったのか、世の中はどうなってしまうのかと心配するオードリーがなかなかよかった。

1959年アカデミー賞作品賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、劇・喜劇映画音楽賞、編集賞、録音賞ノミネート
1959年ゴールデングローブ賞優秀賞
1959年NY批評家協会賞女優賞、監督賞
その他
(2007.4)








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