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オリヲン座からの招待状 2007 日本
東映
ストーリー  別居中の夫婦のもとに京都の老舗映画館からの招待状が届いた。昭和30年代、先代館主松蔵が亡くなり、映写技師の仙波留吉が寡婦のトヨとともに細々と運営していたのだ・・・
監督 三枝健起  原作:浅田次郎
出演 宮沢りえ 加瀬亮 宇崎竜童
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★
コメント  せめてホクロを・・・
 『無法松の一生』(1943)は内務省の検閲により、松五郎が未亡人に想いを打ち明けるシーンがカットされたという。そんな恋の告白でさえも禁じられるという恐ろしい戦時下の日本。しかし、戦後は占領軍によって封建的な部分をまたまたカットされたというのだ。それをそのまま公開しても名作として残るのだから、素晴らしい作品なのでしょう・・・未見。
 こうしてオリヲン座の映画館では劇中フィルムとして、無法松や、『二十四の瞳』『君の名は』などを流すので、悲鳴をあげたいほど映画ファンにとっては嬉しい作品であるのです。ただ、個人的には時代が早すぎました。そして、主人公のトヨ(宮沢りえ)と留吉(加瀬亮)の関係そのものが無法松へのオマージュとして描かれてはいるものの、大事な大事な告白シーンが丸々カットされていたような・・・。映倫はあるけど、さすがに検閲制度の無い現代においてここまでカットされては感情移入しにくいというのも難点の一つ。
 1961年の時点で日本の映画産業は絶頂期を迎え、その後テレビの普及により斜陽となってしまうのですが、ストーリーを考えると少しずれています。大津からやってきた若者が映画館館主の座と未亡人を得るために悪い噂が流れてしまうという原因があるにはあったけど、それだけでは弱かった。さらに、経営の本当の苦しみは70年代に入ってから。どうもオリヲン座は東宝の映画をかけなかったようですけど、寅さんのリバイバルでも上映していたのなら客は入っていたのかもしれません。ピンクをかけなかったという点だけは子どもを大切にしていたとわかる台詞でした。
 『ニュー・シネマ・パラダイス』を彷彿させる映写室。さすがに宇崎竜童の演じた松蔵はアルフレードに対抗するにはいいキャスティング。フィルムが流れるように落ちていくことで彼の死を表現したところなんてのは悲しいけれど、なかなかの演出でした。宮沢りえも加瀬亮もよかったのですが、樋口可南子がやはりよかった。田口トモロヲだけは、こんな役だともったいない・・・もっとカルトな役じゃなきゃ・・・
 キスシーン集に見合うモノ。まったくありません。さすがに告白シーンすらカットされるのですから、純愛も純愛、もしかするとプラトニックな関係だったかとまで想像させるくらい奥ゆかしい日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』だったのかもしれません。
(2007.11)

オールド・ルーキー 2002 アメリカ
ブエナビスタ
THE ROOKIE
ストーリー  1999年、35歳にしてメジャーデビューを果たした実在の人物ジム・モリスの半生を綴った映画。
監督 ジョン・リー・ハンコック
出演 デニス・クエイド レイチェル・グリフィス ジェイ・フェルナンデス
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  聖リタの石油伝説。油が出るまで野球を始めた者たちによってメジャーリーグが栄えたなんて夢のある話だな・・・高校教師と野球部の監督。そんな中、自分が剛速球を出していることに周囲がはやしたて、テストを受けることになった。マイナーリーグ時代にこわした肩が完全に治っていたのだ。生徒たちは監督にプロテストを受けさせるために地区優勝を目指す。なぜだか、そのプロセスだけでも十分映画として通用する。
 3Aから始まったプロ生活。ここからがスピーディすぎたような気もする。あっけなくメジャーに入れたというのも、もともと才能がある選手だったということ。158キロなんて常人じゃ出せないもん・・・まぁ、世の中年にいくらかの夢を与えてくれたことは確か。
(2008.4)

俺達に墓はない 1979 日本
東映
ストーリー  ムショ帰りの島勝男は弟分のヒコと暴力団十日会のノミ屋金庫を襲撃する計画を立てる。しかしヒコは暴力団に追われ、偶然出会った男が仲間になることに・・・
監督 沢田幸弘
出演 松田優作 岩城滉一 志賀勝
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  爆弾だ〜!とデパートのごみ箱に火を点け、レジから金を盗む。素人は狙わないのが信条の島でも軍資金稼ぎが必要だった。おかげでデパートで派遣社員として働いていた川村ミチ(竹田かほり)がクビとなり、偶然にもヒコ(岩城)と寝てしまい、彼らにつきまとうことになった。そして事件を目撃していた怪しげな男(志賀)も島を尾行し・・・。そして、強奪計画実行。しかし強盗には先客があったのだ。
 男を追いかけ取っ組み合いになるが、盗んだ金の大半は川に流れてしまうが、なぜか滝田に気に入られ、コンビを組もうと持ち込まれる島。豚小屋でリンチにあってたヒコを救いだし、次なる賭博ツアーバス強盗を決行。
 後半はほとんどドタバタギャング映画。シャブ中のミチが銃撃戦をかいくぐって盗んだ金をかっさらった辺りからおかしくなってきた。ちょっとした台詞にもギャグが目立つようになり、笑えるんだけど展開がどうでもよくなってくる。松田優作にしても『太陽にほえろ』のセルフパロディのようなシーンだったあるし・・・。それにしてもキャラが皆不死身すぎだ(笑)
 竹田かほりの大胆ヌードに3点!
(2008.1)

俺は、君のためにこそ死ににいく 2007 日本
東映
ストーリー  “特攻の母”として知られる鳥濱トメさんを中心に描いた戦争群像劇なの。
監督 新城卓 脚本・製作総指揮:石原慎太郎
出演 徳重聡 窪塚洋介 岸恵子
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★ なし ★★ ★★ 0
コメント  河合の惣ちゃん、かわいそう・・・ってギャグですか。
 観る気などなかったのに、窪塚洋介の「この映画を見て、戦争賛美だというヤツはアホだと思う。もう一回見た方がいい。見る前に言うヤツはアホ」という挑発的な言葉に刺激を受けてしまいました。たしかに観る前までは、戦争賛美だとか右翼映画だとこき下ろしてみようかと批判の言葉を準備していたのに、観終えた直後は「これは映画になっていない・・・」と、戦争に対するメッセージが云々というよりも脚本の未熟さに驚いてしまう言葉しか思い浮かびませんでした。さすがは“ペニスを障子につきたてる”文章で芥川賞を受賞した作家です。日頃は難解な言葉で人々を煙に巻く雄弁さの政治家がわずか三日で書き上げた脚本だけあって、全く感動できない映画になってしまいました。
 新城監督が悪いなどとは思いたくなかったのですが、個々の俳優のアップ映像が終盤になるまでなかったのも原因のひとつ。それに、登場人物それぞれ過去のエピソードが欠如している脚本。おかげで誰一人として感情移入できない作品に仕上がってます。いくら群像劇といえども、突然登場した俳優が死に行く悲しさを演出するのは不自然すぎるのです。特攻に赴くそれぞれの兵士だって立派な人格を持った個人であるのだから、この映画のように十把一絡げに“みんなまとめて英霊”として称える作者の考えは、一人の兵士は戦争の駒にすぎないということを意味しているのでしょう。
 残念ながら、井筒監督が『パッチギ2』の中で批判したようなシーンはなく、むしろ「死なないで!」と恋人(戸田菜穂)が特攻兵士田端(筒井道隆)に懇願するシーンが全く逆の印象を与えてくれる。と思ったのも束の間、「日本は負ける」とか「生きて帰る」ことに考えが変わる田端がヘンテコな死に方をしてしまい、軟弱者はいらないんだという強い右翼思想が浮き彫りになってしまいました(いつでも死んでやるわい!とか、冗談にもほどがあります)。もう一人「死ぬな」という言葉を使った少年もいましたが、後に彼が自衛隊員になるという奇想天外な後日談で魅せてくれます。
 予告編によっても迫力ある特攻シーンに期待がかかる。しかし、実際には飛ばない実機と模型やCGがほとんどであり、最も悲惨なシーンにおいては敵機の銃撃が散弾銃であるかのようにバラバラで、直線にならないところも見事でした。隼からの俯瞰図は一瞬だけで、急降下する臨場感を無くしたことももお年寄りの観客がショック死しないよう配慮したのか、優しい作りになっています。このクライマックスにおいては、特攻隊員側からよりも米艦側からの映像が中心になっていて、これならば途中に一瞬だけあった実写フィルムを多様して全くのドキュメンタリーにしても良かったのでないかと思えるほど。迫力だけを期待するのなら『パールハーバー』のほうが何百倍か凄いですよ。
 戦争を美化しているという悪印象はそれほど感じられませんでしたけど、“潔く死ねない奴は美しくない”という強いメッセージは伝わってきます。とにかく映画としてお粗末な内容でした。最後にはまるでホラー映画のような演出になっていたこともあるし、桜が満開の時期にホタルが飛ぶという、日本の美しい四季を全く無視したセンスに脱帽です。おかげで映画館を出るときには気分が悪くなってしまいました。
(2007.5)

おろち 2008 日本
東映
ストーリー  美しい少女のまま人間界を見つめていた“おろち”。昭和25年、二人の娘と暮らす大女優の門前あおいの館を訪れ、一族の秘密をかいまみて意識を失う・・・そして20年ほど経った頃、またその館へ・・・
監督 鶴田法男 原作:楳図かずお
出演 木村佳乃 中越典子 谷村美月
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★ ★★★ ★★★★ ★★★
コメント  ギターの達人、エド山口!
 親子流しなどという珍しい職業。もっと彼らのエピソードを見たかったのは贅沢なことなのでしょうか。目が覚めると、おろちがその娘になっていたというシーンが見事だっただけに、よし子さんの悲しい過去も知りたくなりました。
 原作は楳図かずお。これまで映画化された作品の中では完成度が高いような気もするのですが、ホラー映画と言っていいものかどうか迷ってしまう。特殊効果やメイクで観客を驚かせる最近のJホラーとは異なり、女優の演技力に依存した作り方。これで階段落ちのシーンをメインにしたら一流の舞台劇にもなってしまいそうです。個人的には楳図ホラー作品が好きではないのですが、この作品のように“人間が最も怖い”というテーマがあれば面白くなりますね。
 ブラックな人間模様を冷静に観察し続け、歳をとらない美少女キャラ“おろち”(谷村美月)。このキャラが古賀新一の『エコエコアザラク』黒井ミサに受け継がれているのだろうと感じてしまいました。ちょっとした能力を発揮するところなんてソックリ。
 原作を読んだかどうか記憶になかったのですが、結末が予想できるし、その予想通りにならなければ非常につまらないプロット・・・やっぱり読んでたのかな。そんなストーリー云々より見どころなのは木村佳乃と中越典子の演技対決!直情的な動の演技の木村vs内に秘めた静の演技の中越。
(2008.9)

オーロラ 2006 フランス
ギャガ・コミュニケーションズ
AURORE
ストーリー  とある王国。踊りが大好きなオーロラ姫は国が財政難のため政略結婚させられそうになるが、肖像画を描いてくれた画家に恋をし・・・
監督 ニルス・タヴェルニエ
出演 マルゴ・シャトリエ ニコラ・ル・リッシェ キャロル・ブーケ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★
コメント  ジパンゴ王国の踊りは・・・
 踊りが禁じられたバロック時代(?)の小国。それでも踊りが大好きな王女オーロラ姫と、姉の踊りにいつもうっとりしながら見ている弟ソラル王子。一見平和そうな王国ではあったが、干ばつと洪水のため財政難に陥っていたのだ。王の側近はとんでもない策略家。「税金を上げるか」「他国との戦争をするか」「王女を政略結婚させるか」という選択肢で王に忠言するが、平和を愛する王は泣く泣く可愛いオーロラ姫の結婚相手を探すことに同意する。
 主人公のオーロラ(マルゴ・シャトリエ)はまだバレエ学校に入ったばかりの16歳ですが、周りには本物エトワールのニコラ・ル・リッシェなどで固められ、踊りに関しては圧倒されます。ストーリーはリアル指向の宮廷ものから一転してファンタジー映画となるところも面白いし、結婚相手を探すための舞踏会がとても面白い。ベリーダンスのような踊りを披露する中東(?)の国、明らかに日本を表現しているジパンゴ王国は白塗りの舞踏集団、などなど。その出し物を見たオーロラが舞踏会に参加できない弟のために踊りをコピーして見せてあげるところも素敵なのです。
 王妃毒殺計画や、軍事クーデターのようなおぞましい部分は直接描写を避け、あくまで優雅で美しい部分で魅了される。ドレスの胸の部分から剣を抜くようにして脱ぎ、さっとバレエ用の衣装に切り替わるシーンには毎回ドキリとさせられるというオッサン的鑑賞になりました。なぜいきなり踊り出すのか・・・ミュージカル映画に慣れているので歌が踊りに変わっただけだと思えばなんともないし、いきなりファンタジーになる展開だって伏線が効いていたので気にならなかった。
 しかし、『エトワール』というドキュメンタリー映画を撮った監督だけに、やはりストーリーで魅せるまでには至らない。童話のような内容の脚本には割り切って臨めば平気なのですが、終盤の急展開は寛容な気持ちで鑑賞するほうがいいのかもしれません。
(2007.4)



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