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羅生門 1950 日本
大映
ストーリー  雨が降る羅生門に3人の男が話していた。森の中で起こった殺人事件を検非違使で取り調べるが、殺した泥棒の多襄丸、殺された貴族の妻、巫女によって霊として呼び出された被害者本人、そして語り部である杣売(志村喬)の証言が異なってくる・・・
監督 黒澤明 原作:芥川龍之介
出演 三船敏郎 京マチ子 志村喬
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★★
コメント  今でこそ“羅生門スタイル”として映画の一スタイルになっているが、この当時はかなり実験的な内容も盛り込んだ黒澤明の出世作。最初は橋本忍が3日で書きあげたという「藪の中」だけであったが、短いということで黒澤明の協力により「羅生門」をくっつけたという。
 多襄丸(三船)が下手人であることは間違いなく、貴族の妻(京マチ子)が彼に手ごめにされたことも間違いない。人間のエゴと嘘。人間には嘘で固めたほうが楽になるという言葉どおり、殺すことや不貞が本人によって都合のいいように思いこむ。まともな人間なんていない・・・人間不信になってしまう荒んだ世の中はいつの時代にも通ずることかもしれない。
 多襄丸の証言:男の目の前で妻を手ごめ。後に決闘で男を殺した。
 妻の証言:短刀で夫を殺した。
 本人の証言:いつの間にか短刀が刺さっていた。
 杣売の証言:あくまでも短刀ではなかった。
 それに加えて、「殺してくれ」と言ったかどうか、妻の不貞にどう対処したものか・・・などと、各自の尊厳を保つような嘘で固められるのだ。最後には杣売も短刀を盗んだことが暴かれてしまい、坊主までが人間不信に陥りそうになるというラストシークエンス。しかし、最後には温かいエピソードとなるところで極上の作品に仕上がっているのでしょう。
 脚本もさることながら、宮川一夫の撮影技術が凄い。タブーとされる太陽を木漏れ日として直接撮った初めての映画らしいし、雨に墨汁を混ぜた重々しい映像や風そのものを感じさせる葉の影など、細かなこだわりが凄い。
 音楽ではボレロ風の曲が使われていたけど、羅生門スタイルの映画『閉ざされた森』なんてのはモロにボレロだったなぁ・・・やっぱりオマージュだったのか。今の感覚で点をつけたら4点なんだろうけど、スタイルを確立させた功績を称え5点。

1951年アカデミー賞名誉賞(外国語映画賞)
1951年ヴェネチア国際映画祭サン・マルコ金獅子賞グランプリ、批評家賞
1950年ブルーリボン賞脚本賞

(2008.4)

ラスト・アメリカン・ヒーロー 1973 アメリカ
FOX
THE LAST AMERICAN HERO
ストーリー  密造酒を配達していたジュニア・ジャクソンが父親の逮捕を機にストック・カーレースに出場し、優勝してしまう。
監督 ラモント・ジョンソン
出演 ジェフ・ブリッジス ヴァレリー・ペリン ジェラルディン・フィッツジェラルド
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★ ★★★★ ★★★ ★★★
コメント  ブタ箱にも待遇のランクがあって、世の中金次第!なんて社会派っぽいところも見せる。で、いきなりレースに出場するジェフ・ブリッジス。100ドルとか300ドルの賞金でもどんどん出場して連戦連勝。父親が1年の刑期を終え出所し、「金のためにレース」をすることを咎められる。
 ドミニオン500というレースで勝つところまで。スポンサーとの交渉とか、ジュニアの勝気で傲慢な性格は直らないなぁ・・・
(2008.10)

ラストキング・オブ・スコットランド 2006 アメリカ/イギリス
FOX
THE LAST KING OF SCOTLAND
ストーリー  当初は英雄としてウガンダ大統領の座につくアミン。次第に独裁者の色を濃くし、殺戮を繰り返すようになった。スコットランドの医学校を卒業したニコラス・ギャリガンはウガンダの診療所に勤務したときは大統領就任直後。
監督 ケヴィン・マクドナルド
出演 フォレスト・ウィテカー ジェームズ・マカヴォイ ケリー・ワシントン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★★
コメント  赴任した村ではメリット医師の妻サラにちょっかいを出してしまうギャリガンだったが、大統領の手の怪我を治療したことがきっかけでアミン大統領直属の主治医兼側近となってしまう。かなり気に入られ、気さくな友達のような関係を築くのだった・・・
 アミンの態度が豹変したのは、前大統領オボテの一派だと思われる族に襲撃されたことがきっかけだった。最初に紹介された側近ジョナも怪しかったし、誰も信じられなくなる様子が絶妙。
 あまりにも深く関り過ぎた。しかも客観的な実情を知らなさ過ぎたのだ。ギャリガンは、ワスワ保健大臣が怪しいと進言したおかげで彼が暗殺されたことを気にかけていた。あまりにも粛清された人物が多く、政府はその死体さえ隠そうとしなくなっていたほど。故郷に帰りたくても帰れない状況だったのだ。切羽詰った状況下で、アミンの夫人と寝てしまい、妊娠してしまった・・・やばすぎる。
 妻ケイとの関係も知っていたアミンはギャリガンをも殺そうとしていたのだ。しかも出身地の風習に従って皮だけで吊るして痛めつけるという方法で。その前の映像で、死体の足と手を入れ替えたりしたグロいものもあったし、最後は観てる自分までもが殺されそうな錯覚となってしまう。ウィテカーの恐怖の人格は各賞総なめしたのも当然の演技だった。
 それにしても最も勇気があったのは、同僚医師のトーマス。自分の命を顧みずギャリガンに全てを託す決断をしたのが凄かった。あまり出てこなかったけど、外国人記者たちもよく平気だったと思うぞ。

2006年アカデミー賞主演男優賞
2006年ゴールデングローブ賞男優賞
2006年英国アカデミー賞主演男優賞、脚色賞、イギリス作品賞
その他多数
(2007.10)

ラストゲーム 最後の早慶戦 2008 日本
シネカノン
ストーリー  昭和18年。戦局が悪化する中、野球が敵性スポーツとされ六大学野球連盟が解散。その後、学生の徴兵猶予も停止された。出征前にもう一度試合をしたいという部員たちの想いを受け入れた慶応塾長小泉が早稲田の野球部顧問飛田穂洲に試合を申し出る・・・
監督 神山征二郎
出演 渡辺大 柄本佑 和田光司
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  父が心配そうに息子を見つめる姿を見逃すな・・・錯覚だったかも・・・
 六十五年の時を経て永遠に語り継がれる試合がある。昭和十八年、戦局が悪化する中で、野球が敵性競技とされていた時代のことだ。四月に六大学連盟が解散させられ、九月には学生の徴兵猶予も停止され、、多くの野球部員が戦場へと駆り出されることになった。戦場へ赴けば生きて戻ってこれなくなる・・・選手たちは徴兵前に何とかして早慶戦を行って思い出を作りたかった。
 慶應義塾の小泉塾長(石坂浩二)が早稲田の野球合宿所を訪れ、早稲田大学野球部顧問の飛田穂洲(柄本明)に試合を申し出るが、早稲田大学総長(藤田まこと)は頑として拒絶する。野球部員たちの熱き思いと飛田自身の思いが早慶戦開催させる物語なのです。
 主人公は戸田順治(渡辺大:渡辺謙の息子)。彼の兄も野球をしていたが陸軍へ志願していて、自分の叶わなかった夢を弟に託す。父親には山本圭。いつもの印象とは違い、軍国主義にどっぷりと浸かった人物にも見えるという意外性。そして母親には富司純子。息子が出征することを誇らしいとは言えずにいたが、「立派な母親ではありません」と一気に自戒を解く台詞が感動的でした。
 この戸田一家を中心に展開するものかと思っていたけど、順治と同室の黒川(柄本祐)の淡い恋、食堂の娘(原田佳奈)が部員の憧れの的だったという挿話などもあり、飛田の熱心な交渉と腹を決めた決断が“出陣学徒壮行早慶戦”開催に結びつくのが中盤における感動の頂点となっていた。もちろん、号泣できるのは試合後に応援歌、校歌を相手の応援団が歌うところ。
 北京五輪における星野日本が世間や報道で非難轟々だったのですが、なぜここまで非難されるのか不思議でしょうがない。金を獲ること、強豪国に勝つこと。元々彼の強気な発言や豪華な職業野球人を揃えたことへの反動もあるのだろうけど、こうした非難こそ国力の顕示を求めた、いわば競技という名を借りた戦争といった印象が残ってしまう。野球そのものが平和の象徴であるとか、純粋に試合を楽しむといった原点を思い出させてくれるこの作品を観てしまうと、「試合を楽しむだなんて恥知らずだ。勝たなきゃ駄目」とのたまった、憎たらしい政治家の顔まで思い出してしまいます。
 この実話の映画化は初めてなのかと思っていたら、一九七九年に岡本喜八監督の『英霊たちの応援歌/最後の早慶戦』で一度映画化されているようです。特攻隊を描いた部分もあるらしいのですが、今回の神山征二郎作品では戦争描写が最後に実写映像が出てくる程度。戦争の恐怖や悲惨さよりは、徴兵を余儀なくされる若者の理不尽さや、平和を願う人間愛を強烈に感じました。
 渡辺謙の息子の演技は、卒は無いが強烈な印象もないといった感じ。山本圭や富司純子は見事に感動を与えてくれるのですが、それよりも際立った演技は柄本明。“一球入魂”という言葉を残し、学生野球の基礎を作った功績のある飛田穂洲という人物にも興味が出てきます。
(2008.8)

ラスト、コーション 2007 中国/アメリカ
ワイズポリシー
LUST, CAUTION  色・戒
ストーリー  日本軍占領下の中国。香港で普通の女子大生だったチアチーは演劇部の仲間とともに日本の傀儡政府の特務機関の男イーを暗殺する計画を立てる。
監督 アン・リー
出演 トニー・レオン タン・ウェイ ワン・リーホン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  わかりやすい抗日暗殺モノ。
 レジスタンスが敵と目される人物を暗殺するといった内容の映画は数多くあるけど、中国映画となるとなかなかお目にかかれない。最近見た映画では『パープル・バタフライ』なんてのがあった。しかし、今作では暗殺のターゲットは同じ中国人イー(トニー・レオン)。戦時下でもあり、日本政府の犬と噂されるほどの人物だが、特務機関の仕事は抗日運動する中国人を捕え葬ることにあった・・・
 “抗日”といっても、戦時下ではどこでも湧きおこる“反戦”と同義だと思う。列強の帝国主義による中国分割の時代からずっと虐げられる生活が続いていたと想像できるだけに、常に被占領の意識があったことでしょう。それでも直接侵略軍とゲリラ戦を行うのではなく、自国内の裏切り者を暗殺するという、どちらかというと愛国右翼的な行動のような雰囲気でした。
 とにかく標的はイー一人。香港の大学で知り合った6人の劇団員は稚拙ながらもチアチー(タン・ウェイ)を上流夫人に仕立て上げて、慎重で隙がない彼に近づいてゆく。やがて愛人になれそうな雰囲気になったとき、性体験がないと不自然なため仲間うちで無理矢理セックスしてしまう。信条のためとはいえ、ここまで機械的に女スパイに徹する若者たちに悲しくなってしまう。ただ、計画前の劇団公演における「中国を滅ぼすな」コールで気分高揚してしまったので、こんな悲しさもすんなり受け入れられた・・・
 R18指定だけあって激しいセックス描写。男の愛欲も真剣であるはずなのに、殺せるほどの隙がない。チアチーがフックにかかっている拳銃を見つける。イーはその彼女の表情をチラリと見る。するとチアチーは枕でイーの目を隠す・・・このときすでに殺害を諦めていたのか、愛し始めていたのか・・・などと、ベッドシーンにおける心理のやりとりも見どころのひとつ。
 アン・リー監督は何度も登場する麻雀シーンにこだわったと答えていたけど、切り返しという点ではさほどのアイデアもなかったような。日本では11PMでの実況中継や、『麻雀放浪記』といった撮り方に工夫した映像があるためかもしれない。そういえば、タン・ウェイの腋毛も印象的ですが、『麻雀放浪記』の加賀まり子もフサフサだったような記憶がある・・・けど、確信はもてない。
 わかりやすく完成度も高い作品だった。しかし、イーとチアチーが宝石店で顔を見合わせたシーンはなぜか唐突感が残ってしまいました。それまでに仲間の姿を確認していたけど、どこで決断したのか・・・表情だけでは読み取れなかった。

2007年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、金オゼッラ賞
2007年ゴールデングローブ賞外国映画賞ノミネート
その他いっぱい
(2008.2)

ラスベガスをぶっつぶせ 2008 アメリカ
ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
21
ストーリー  理系では最高峰のMITの学生ベン・キャンベル。医者になることが目的である彼は在籍中にハーバードに受かるが、奨学金を得るのは大変なのだ。そんな彼に目をつけたローザ教授は彼をブラック・ジャック必勝術のカウンティングの研究室に誘うのだった・・・
監督 ロバート・ルケティック
出演 ジム・スタージェス ケイト・ボスワース ローレンス・フィッシュバーン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  コッシー、コッシーとうるさい!ええ、秘技を盗ませていただきますよ・・・
 原題はブラックジャックの最高得点の“21”だし、主人公ベン・キャンベル(ジム・スタージェス)の年齢も21歳。なぜだか『つぐない』にも21の数字が絡んでいた。映画では基本的なルール説明もなかったようなので、知らない人はある程度勉強しておいた方がいいかもしれません。
 とにかく天才のベン・キャンベル。MIT(マサチューセッツ工科大学)在籍中ながらハーバードに受かってしまう。しかし、30万ドルの学費を捻出することもできず、奨学金を勝ち取ることも困難なのです。そんな折、ローザ教授(ケヴィン・スペイシー)が彼の才能に目を付け、自らの研究室に誘う。“カード・カウンティング”という記憶力と数学力を駆使した技によってカジノで儲けるというものだ。
 う〜む、なんだか自分にも出来そうな気がしてきたぞ(記憶力が弱いから無理)。それに、研究チームに入る前の、“variable change”も気になるところだ。パチンコの台で考えると、3台あるうち、1つが大爆発すると仮定して、他人が1台で負けたとすると、自分が打とうとしていた台を諦めて空いてる台を打てばいいわけだ(ちょっと違うかもしれない・・・いや、仮定がそもそもおかしい)。でも、確率が変わるなんてのは目から鱗。
 sweet、16!salary、15!なぜだかつまらない暗号ばかり覚えてしまったけど、countingそのものの技は全くわからない。それでも運に頼ることなく勝負に勝てることがわかった・・・ような気がする。「奴ら、カウンティングをやってやがるな」などと見抜くローレンス・フィッシュバーンも凄いし、追われているのに学生たちを堂々とカジノへ引率するスペイシーもなんとなく凄い。そして、やっぱり人生経験不足のためか、学費を稼いだらやめると誓った主人公がふとしたことから落ちていく様子も生々しいのです。最後はちょっとしたどんでん返しもありましたが、それほど痛快ではなかったかも・・・単位を落とされたときはかなり同情しちゃったけど・・・
 ギャンブルやってんじゃねー!これはビジネスなんだ。熱くなったら負ける。冷静に稼ぐことに集中しなければ勝てないもの。パチンコに例えると、メーカーが次々と新台を導入するのはプレーヤーを熱くさせるため。これは教訓です。
 学生の頃、kossyはパチンコ遠征した際、ある店で「学生のくせに落ち葉拾いするな!」と店員に怒られ、出入り禁止になったことを思い出しました・・・2度と行くもんかっ!
(2008.5)

ラスベガスをやっつけろ 1998 アメリカ
東北新社
FEAR AND LOATHING IN LAS VEGAS
ストーリー  スポーツ記者のラウル・デュークとサモア人弁護士ドクター・ゴンゾーはドラッグを詰め込みラスベガスへ向かった。ヒッチハイカーを乗せ、ドラッグ三昧で狂ったような行動をする彼らには、ある目的があった。
監督 テリー・ギリアム
出演 ジョニー・デップ ベニチオ・デル・トロ トビー・マグワイア
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★★ ★★ ★★★★ ★★★★ ★★★
コメント  主演の3人・・・さっぱりわからない(笑)。目が慣れてくるとようやくわかる。それにしても頭頂部が禿げ上がってるジョニデというのもなんだか・・・
 とにかくラリラリ。ドラッグの症状というのはこんなものなのかという幻覚映像のオンパレード。バイクレースを取材するという建前はどうなったんだ。と、ベトナム戦争の映像がテレビで流れ、ニクソンの顔に脅かされるような映像もあった。
 アメリカンドリームを追い求め、ベトナム戦争以外で人生を見出そうとしていた二人。結局最後までジャンキーになる様子を描いていたけど、ほんとに酔ってしまいそうな感覚に・・・
 キャメロン・ディアス、クリスティナ・リッチ、エレン・バーキンと新旧有名俳優を使ったのも贅沢だったけど、70年代のニューシネマにはなぜか時代がついていかないもどかしさ。

1998年カンヌ国際映画祭コンペ
(2009.1)



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