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酒井家のしあわせ 2006 日本
ビターズ・エンド
ストーリー  再婚の両親のもと、中2の息子次優は母・照美の連れ子で、娘光は照美と正和の子。家族内はぎくしゃくしながらも平穏を保っていたが、ある日、正和は好きな男ができたからと言って家を飛び出してしまう・・
監督 呉美保
出演 森田直幸 ユースケサンタマリア 友近
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  勉強しまっせ、引越しの酒井家・・・
 お盆に里帰りしたときにカニを食べるのはどうかと思いましたが、ユースケ・サンタマリアが笑い転げてくれたおかげで直ぐに忘れ去りました。大阪にある里はお母さん(友近)の実家で、お祖父ちゃんが笑福亭仁鶴という豪華な家族。突如相続問題なんかを話し出すものだから、つい「生活笑百科」を思い浮かべてしまいます。家族構成を対比しながら観ていると、とてもリアルに描いてあることもわかりました。
 主人公はお母さんの連れ子である中2になる息子(森田直幸)。彼の目から見た新しいユースケお父さん像と、ほんのりとした淡い恋心。積極的な女の子・谷村美月を部屋に入れたシーンにはドキドキしてしまいます・・・男の子の部屋に入るのは初めてだったのか、海賊盤DVDを探していたのかわかりませんけど、黒い涙は流さずに白いアイスクリームを食べていたのが印象に残ります。
 家族の崩壊と再生・・・またこのテーマなのか?と家族それぞれの心理を探りながら観ていると、突然、ユースケお父さんが家を出て行くという展開。「好きな人ができたから」「しかもその相手は女じゃなく男」というハリウッドライクな意外性で攻めてきます。またしても「ゲイのためなら〜♪」と口ずさんでしまいそうになる映画かと思ったのですが、主役は思春期・第二反抗期を迎えている息子なので、観客としてもそう茶化すわけにはいかなくなりました・・・
 終盤になると、なぜか号泣。家族それぞれが自分なりの愛情を抱いていたことがわかり、心が温かくなります。それにしても、関西弁のお母ちゃんは強い!「結婚するなら絶対に関西の女だ」と感じる関東の男性も増えるかもしれない。そんな映画でした。
 三重県伊賀がロケ地であるせいか、ラストシーンにはとっくりのセーターで顔を隠すカットがあります。なんとなく○○美容整形外科のCMへのオマージュかとも思いましたけど、さすがに強い母ちゃんでも割礼まではしないようです・・・
(2007.2)

佐賀のがばいばあちゃん 2006 日本
ティ・ジョイ
ストーリー  B&Bの島田洋七の幼い頃、貧乏なために広島から佐賀のおばあちゃんの家に預けられたという実話にそった物語。
監督 倉内均
出演 吉行和子 浅田美代子 工藤夕貴
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★★ ★★★ ★★★★★ ★★★★★
コメント  公開2週目にレイトショーがあるとわかり、隣県まで・・・節約ですよ!節約!ケチだからじゃありません。
 島田洋七による昭和30年代の自伝的ストーリー。高度成長期の頃の映画化という点で、なにかと『ALWAYS三丁目の夕日』と比較されますが、こちらは古行淳之介というもじりではなく、本物の吉行淳之介の妹である吉行和子が主演だ。
 明弘少年は2人兄弟の弟。父親は原爆症で早くに亡くなり、母と三人暮らしなのですが、生活が苦しいため、佐賀のおばあちゃんのもとへあずけられることになった。佐賀に連れられていく方法も騙して拉致したようなもの。そしていきなりのホームシック。8歳だと当然です。
 ようやくばあちゃんとの生活も慣れてきたかと思っても、「かあちゃんに運動会に来てもらいたい」と子供らしい願い。この運動会のシークエンスは自分の小学校時代を思い出してしまい、泣けてしまいました。楽しい昼食の時間だとか言われても、親が来ない子供は寂しいものです。「運動会のかけっこで順位をつけるな」といったバカな発言をする親もいるようですけど、そんなことより「親と一緒の昼食時間を無くせ!」と主張したいですね。劇中には弁当を交換してくれる優しい先生が登場しますけど、世の中いい先生ばかりではありませんから・・・
 先祖代々明るい貧乏を目指すばあちゃんでしたけど、人生訓の宝庫のような人でした。生きることが素晴らしいといった想いが伝わってきます。剣道に憧れるけど金がないからと許されず、おばあちゃんの経済事情も察知できるようになった明弘は柔道ならと申し出るが許されず、「スポーツがしたければ走れ」と言われる。しかも靴は磨り減ってもったいないから裸足で!自分も貧乏だったけど柔道は許されたなぁ〜などと、すべて自分の幼少時代を思い出しながらの鑑賞になりました。学校の先生にしろ、緒方拳演ずる豆腐屋さんにしろ、周りも(人に気づかれない)優しい人ばかりだったし、すべて島田洋七の人生のこやしになっていたんだと感じられ、ちょっと羨ましくも思えてしまいます。
 演技ではハズレのない山本太郎はもちろんよかったし、工藤夕貴もよかった。島田洋八の登場シーンはなぜか見逃してしまったけど、エンドロールの協力者の中に今いくよ・くるよを見つけたので、ちょっとだけ得した気分になりました。さすがに「もみじまんじゅう〜」は聞かれなかったが、このギャグもばあちゃんがいなかったら生まれなかったんでしょうね。
(2006.6)

サーカスの世界 1964 アメリカ
COL
CIRCUS WORLD
ストーリー  サーカスの団長マットは、アメリカ最大の一座を率いてヨーロッパ巡業に旅立つ。しかし荷物を積んだ船は転覆し、すべてを失ったマットはヨーロッパでの再起を決意する・・・
監督 ヘンリー・ハサウェイ
出演 ジョン・ウェイン クラウディア・カルディナーレ リタ・ヘイワース
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★ ★★ ★★★ ★★
コメント  空中ブランコのスターとなった18歳のトニー(CC)。母親は14年前に失踪していたのだが、それほど関心もない様子。空中ブランコの回転がすごい新入り団員g母親リリー(ヘイワース)だとわかったときの反応も現代っ子風だった。
 物語の筋はその母娘の部分が大きく、船でサーカス団の荷物を失ったり火事になったりといった苦難を乗り越えることがテーマではない・・・もっと骨太の作品になりそうなのに。結局はメロドラマですかい。まぁ、CCがとても良かったので許す!

1964年ゴールデングローブ賞歌曲賞
(2008.12)

さくらん 2007 日本
アスミック・エース
ストーリー  遊郭吉原に連れられた少女は玉菊屋できよ葉と呼ばれることになった。
監督 蜷川実花   原作:安野モヨコ
出演 土屋アンナ 椎名桔平 安藤政信
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★
コメント  刺されたと思った永瀬正敏。秘剣“鬼の爪”で返り討ちじゃ!
 「今日からお前の名前は・・・千じゃ!」と、夏木マリの声が一旦湯婆婆と重なると、最後まで湯婆婆にしか見えなくなる。するとハクは安藤政信なのか?彼もまた名前を奪われて捕らわれの身となったのかもしれない。などと考えているうちに、カオナシはいつ出てくるんだという期待とともに、土屋アンナが妖怪に変身するんじゃないか妄想してしまいました。
 吉原だとか花魁の世界を描いた映画は80年代に多かったような気がするのですが、21世紀に入り、新しい感覚で描かれたとしても、結局は五社英雄の世界と同じだ。巨大なセットが色彩感覚豊かな美術重視のセットに変わっただけのこと。むしろ、2年前のハリウッド製作の『SAYURI』のほうが、時代考証だとか不自然さのほうが大きく感じられ、ある意味新鮮に感じるのです。
 この『さくらん』の監督は写真家の蜷川実花。カメラアングル、徹底した金魚のイメージ、そして彩度を自在に操って吉原内と外の世界に絶妙なコントラストを生み出している点など、美術的には評価も高くなるが、ストーリーや演技などの動きが必要な部分は全く面白味がない。繊細な心理描写が描ききれてないように思いました。不思議と濡れ場だけは見事に撮ってあったけど・・・後ろから乳を揉みしだかれるのが好きなのかもしれません。
 豪華な出演陣もエンドロールで初めてわかったくらい、無駄な使い方。もちろんメインの俳優たちは楽しめたのですが、土屋アンナにしてもヤンキーぽい口調以外は上手くないことがわかってホッとしました。男優では安藤政信がよかったですね。いつもはひいき目に評価していた成宮寛貴のひきつった笑いは微妙でした・・・
(2007.3)

2006 日本
ザナドゥ=エイベックス=ファントム
ストーリー  吉岡刑事の周囲で連続殺人事件が起こる。犯人を追ってるはずなのに、赤い服を着た女の姿に悩まされ、自分が殺したんじゃないかと悩む。
監督 黒沢清
出演 役所広司 小西真奈美 葉月里緒菜
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★
コメント  「スーパーマンだ!」「いや、Gガールだ!」「きゃー、葉月里緒菜よっ!」
 黒沢ファンだったら評価を辛くするのではないかと思えるのですが、さすがTBSがついてるだけあって、とてもわかりやすい黒沢映画に仕上がってた。「連続事件発生!犯人は、俺?」というコミカルな役所広司にも期待が高まるうえに、サイコ・サスペンスのような怪談のような絶妙にミスリードさせる手法によって万人に受けるホラー・プロット。役所広司がドッペルゲンガーして、とんでもないことをやるような気がしてヒヤヒヤしながらのめり込んでしまいました。
 一般受けする作りになっているとは言え、それでも黒沢清らしいのは舞台設定ではないでしょうか。埋め立てによる乱開発によって湾岸の寂れた雰囲気が重くのしかかり、警察署の中も暗さが際立っているほどです。主人公吉岡刑事(役所)の住むアパートにしたっていかにも取り壊し直前といった古さだし、旧フェリー航路にある謎の黒い建物も異様な妖気を漂わせている。急速な都市開発によって忘れ去られてしまう残骸そのものが幽霊の源になっていると思わせるのです。
 連続殺人を解明するうちに、それぞれの犯人が何者かに怯えていることがわかり、その正体は自分が悩まされている同じ赤い服の女(葉月里緒菜)ではないかと疑う吉岡。カウンセラー役のオダギリジョーもお手上げ状態となるほど霊的な話となってくる。そして、吉岡は次第に赤い服の女はかつて利用していたフェリー航路から見える建物の女ではなかったか、と疑念が膨れ上がるのだ。個々の事件は心の闇の部分で繋がっていく・・・
 ムンクの叫びを彷彿させる葉月里緒菜の表情や彼女の飛行シーン。中村育二の飛び降りシーン。そしてラストの伊原剛志のショッキングなシーン。映像としての見所はいっぱいですが、それよりも「全部なしにしよう」というメッセージが心に残ります。都合の悪いものは全て闇の中に押し込んで、表面的な平和を装おうとしている世の中そのものへの痛烈なメッセージ。許しを得られるのはそれを暴いた者のみ。折りしも従軍慰安婦問題が米国議会でも論議されてる中、確たる証拠がないと言い張って闇に葬り去ろうとしている政府動きを思い出してしまうのは飛躍しすぎかもしれないが・・・
(2007.3)

叫びとささやき 1972 スウェーデン
東和
VISKNINGAR OCH ROP
ストーリー  19世紀の上流階級。両親を亡くしてから使用人と二人きりで生活する独身のアングネスは子宮がんで若くして人生の終えんを迎えようとしていた。結婚して家を出た姉と妹が見舞いに訪れるが・・・
監督 イングマール・ベルイマン
出演 イングリッド・チューリン ハリエット・アンデルセン リヴ・ウルマン
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  がんで死んだはずのアングネス。やってきた姉カーリンと妹マリーアのことが心配なので、死しても2人をベッドに呼ぶ。
 3姉妹それぞれの回想シーンが展開するけど、顔が似ているため混乱しそうにもなる。性格の違いを見事に表現した脚本は素晴らしい出来。現実と過去を繋ぐ赤い画面のフェードイン&アウトが上流階級の闇を表現しているようで感情を揺さぶられる。3姉妹と使用人アンナそれぞれのクロースアップは陰影が強調されていて、喪服の黒、壁の赤が不気味なコントラストを保っていた。そして、安らぎを覚える白。アンナが胸元を露に死にゆくアングネスに母親のような態度で寄り添う光景が印象に残る。
 医者との浮気が原因で自殺する夫というエピソードもあったけど、彼女たちの欲望に渦巻く世界も聖なるアンナによって浄化されるような。終盤には心霊的な怖さもあったが・・・

1973年アカデミー賞撮影賞
同作品賞、脚本賞、監督賞、衣裳デザイン賞ノミネート
1973年カンヌ国際映画祭フランス映画高等技術委員会賞
1972年全米批評家協会賞脚本賞、撮影賞
その他いろいろ
(2007.12)



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