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父親たちの星条旗 2006 アメリカ
WB
FLAGS OF OUR FATHERS
ストーリー  硫黄島の英雄と讃えられた3人の兵士。国費を稼ぐためのキャンペーンに駆り出され、徐々に戦争へ虚しさ、利用されていることの不満が噴出してゆく・・・
監督 クリント・イーストウッド 脚本:ポール・ハギス
出演 ライアン・フィリップ ジェシー・ブラッドフォード アダム・ビーチ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★★
コメント  迫力ある硫黄島上陸シーン。血圧が上がって倒れるかと心配したけど、正常値だったようだ。
 終わってみると、「英雄なんていない」という一貫したテーマが胸に響いてくる。星条旗の6人として硫黄島の凄惨な戦いに勝利したアメリカの英雄として熱狂的に迎えられたドク、レイニー、アイラの3人。彼らの帰還してからの映像が中心となるが、回想シーンとして臨場感溢れる戦闘シーンが交互に描かれ、現代、ドクの息子が死期がせまっている父を知るためにその真実を辿るインタビューを続ける。
 硫黄島の決戦から帰還した彼ら3人は戦費獲得のためのキャンペーンに駆り出され、自分たちが英雄でないことや、星条旗の真相を隠しながらも政府の要請に従ってゆく。星条旗を掲げた真相や戦友の死の真相を隠したまま、レイニーは就職にも上手く利用しようとし、インディアンであるアイラは人種差別や戦争の虚しさに疲れ果てる。そして衛生兵ドク(ライアン・フィリップ)が冷静な目で彼らや国の政策を見つめ、戦士の死を悲しむ・・・
 戦争映画の大半が反戦映画であることは間違いないと思うのですが、この映画はアメリカでしか作れないような、違った視点で描かれていました。「真の戦争の英雄は誰なんだ?」といったアメリカ万歳映画も多い中、敢えてアンチテーゼを唱えたかのような心意気が感じられるのです。さすがは老獪イーストウッド。人生経験の豊富さによって、「戦争なんて虚しいだけさ」「ヒーロー気取りもいいが、しっぺ返しを食らうぞ、ふ・ふ・ふ」と達観したかのような彼のつぶやきが聞こえてくるような気がしてくるから不思議だ(しかも、なぜか日本語で)。
 国策映画、戦意高揚映画、そういった過去の政策がいかに虚しいものか、戦争の裏側とはこんなものだと淡々と語られる様子は前半のド迫力の生々しさと対照的で、観終わってみると色々と考えさせるような内容。「正義と悪、勝ちと負けを描いたものではない」と強く訴えるイーストウッドですが、命を落とした人に敬意を払い、日米双方にも気を配った優しさも感じれる。序盤に聞えてくる東京ローズのラジオ番組も興味深いところだし、英雄視された3人の将来にも驚かされ、エンドロールに登場する写真が本物か映画なのか区別がつかないところもビックリです。
(2006.10)

父、帰る 2003 ロシア
アスミック・エース
VOZVRASHCHENIYE   THE RETURN
ストーリー  12年間音信不通だった父がいきなり帰ってきた。そして、父親と兄弟で小旅行に出かける。何も語らなかった父だが、兄アンドレイは喜び、弟イワンは反抗的になっていった・・・
監督 アンドレイ・ズビャギンチェフ
出演 ウラジミール・ガーリン イワン・ドブロヌラヴォフ コンスタンチン・ラヴロネンコ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★★ ★★★★★
コメント  何だこれ。胸が苦しくなるような美しい映像。従順な兄と反抗的な弟との性格の対比。何もかもが心に沁み込んでくるかのように攻め続ける映画だ。ズビャギンチェフ監督はキタノ監督に憧れていたというが、完全に抜いてしまっている。
【ネタバレ注意】
 月曜日。突然帰ってきた父親。何の為に12年間家を離れていたのか、何の目的で息子たちを小旅行に連れ出したのか、答えを明示せずに淡々と旅行記を綴っていくかのように旅はすすむ。
 初日、レストランから出るときに飢えた少年に財布を盗まれた兄弟。「自分で取り戻せないのか」と叱咤激励する父。父の威厳とともに、息子を教育するために旅へ連れ出したのだろうかとも思わせた。生意気な弟の父親を信じない姿をみると、置いてけぼりにしたりする気持ちがよくわかる。
 父親の職業はパイロットだと母親に聞かされていたけれども、電話、貨物船、無人島、謎の箱から想像しても、とてつもないことを考えていたに違いない。監督の意図はソ連崩壊後のロシアやキリスト教を暗喩しているというが、そんなことはさっぱり思いつかない。人がほとんどいない大自然の美しさに目を奪われ、そして死体となった父親に圧倒されっぱなしになるからだ。敢えて考えつくことを言えば、共産主義社会に甘んじていたが厳しい資本主義が突如やってきたということなのだろうか。誰にも感情移入できないように視点が定まらないことは、母親が遠く自宅で彼らを祈っているのかもしれないし、そうなると父親像はやはりキリストということになるのだろう。教えだけを残して先に死んでいくような。そして、毎日晴天の後に突如雨が降ってくることは、単にロシアが天気の変わりやすい気候というよりも、資本主義社会の好不景気が繰り返されることを意味するのかもしれない。
 与えられた材料で可能な限りの想像をすると、父親は仲間と一緒に難破船などサルベージ作業をするのが仕事。犯罪に絡んでいたかもしれないが、ようやくお宝を少数の仲間で分け合う機会を得た。そろそろ家にも帰れるので息子たちを連れて、宝を隠した無人島へとやってきた・・・結局、宝は父とともに海の底深く沈んでしまいましたとさ。
 ボートに乗せた死体がひょっとして「父、生き返る」んじゃないかと、よからぬ方向へも想像してしまった。兄アンドレイ役のガーリン少年は撮影後、溺死してしまったという悲しい事実もこの映画に哀愁を帯びさせている。

2003年ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、新人監督賞
2003年ゴールデングローブ賞外国作品賞ノミネート
2003年ヨーロッパ映画祭ディスカバリー賞
(2005.10)

父と暮せば 2004 日本
パル企画
ストーリー  原爆投下されてから3年後。自分だけ生き残った負い目によって幸せを拒んでひっそりと生きている美津江は、職場の図書館で木下と出会う。互いに淡い恋心を抱くが恋心を抑えようとしている美津江の前に父・竹造の幽霊が現れる。
監督 黒木和雄 原作:井上ひさし
出演 宮沢りえ 原田芳雄 浅野忠信
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★★★
コメント  元は舞台劇なので父と娘の会話中心。しかし、悲惨な映像を映し出さないのに原爆の傷跡を胸が絞め付けられるほど痛感させられた。生き残ってしまったたために申し訳ないと幸せを捨て去ろうとする美津江に、応援団長と名乗り、希望を与えてくれる父。生き残ってる者をも不幸にしてしまう戦争の醜さをひしひしと訴えてくる。
 木下がくれたお饅頭について真剣に論議する父娘。なんとか二人を結び付けたい一心で、幽霊となってきた。原爆瓦や体内から出てきたガラスの破片。こうした小物だけでも痛さが伝わってくる。美津江が物語を語り継ぐ会に所属していたこともあって、真実をねじまげないで後世に伝えるという信念が戦争体験を語り継ぐことの伏線にもなっている。
 被爆者であることを隠し通そうとする人たちがどれだけ多かったことだろう。本来ならば、もっともっと被爆体験記が世に出ていいはずなのに、この主人公と同じように生きることの希望を失った人が多いことは容易に想像できる。亡くなった犠牲者の分まで真摯に生きて、戦争の悲惨さを語り継ぐ。戦争を体験していない者ももっと頑張らねばと考えさせられた。

2004年ブルーリボン賞主演女優賞
(2005.12)

父と娘の歌 1965 日本
日活
ストーリー  米軍キャンプでクラリネットを吹いている父親・道一(宇野)と二人暮らしの女子高生・紘子(吉永)。
監督 斎藤武市
出演 吉永小百合 宇野重吉 奈良岡朋子
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★
コメント  演奏旅行から帰国してきたピアニスト江戸(神山繁)にあこがれ、レッスンを受けたい紘子だったが、家庭はそれほど余裕のない卓家。紘子はバイトとしてベビーシッターを始めた。
 なにしろ借家住まいだし、ピアノも家にはないのだ。バイオリンを弾く阿川(浜田光夫)の仲介もあって、なんとか週一回のレッスンを受けることができるようになった・・・しかし、父親が心臓の病気でクラリネットを吹けなくなる。
 父親の注射代を稼ぐため音楽大学進学も諦め、夜のクラブで働くようになった紘子。ピアノを弾くことが何のためになるのかと音楽に対する情熱も失い、江戸先生のレッスンも身が入らない。と、そんなとき思い出したのが幼き頃、亡き母(奈良岡)が弾いてくれたピアノだ。掃除婦をするかたわらでいきなり弾きだすシーンはなぜか感動的だったりする。
 阿川や吉行(山内賢)の助けもあって音大に合格。寮に入り、バイトで父の療養費と学費を稼ぐ紘子。父も娘も結構頑固なところがあって、人の助けを借りようとしない。指を怪我したとき収入がないので父がこっそり写譜のバイトを与えるところもいい。
 コンクールでいきなり優勝したり、頭角を現すところはご都合主義的だけど、最後にはオーケストラで父娘の共演という夢の舞台。チャイコフスキーのピアノ協奏曲第一番だ。
 何がいいって、吉永小百合のピアノ!どこまでが吹き替えなのか、それとも一切吹き替えがないのか?!気になってしかたがない。それほど小百合ちゃんの指が音楽にピタリと合っているのです。ミスタッチもそのまま使われているし・・・意外と「ひょっこりひょうたん島」も良かったりする。
(2008.10)

父の祈りを 1993 アメリカ/イギリス
Uni=UIP
IN THE NAME OF THE FATHER
ストーリー  1974年、ロンドン郊外の町ギルフォードで爆発事件が起きた。IRAとも全く繋がりのないジェリーが無実の罪で逮捕され、叔母とその家族、父も有罪判決を受ける。
監督 ジム・シェリダン
出演 ダニエル・デイ=ルイス エマ・トンプソン ピート・ポスルスウェイト
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★★ ★★★ ★★★★★ ★★★★★
コメント  父と息子が同じ刑務所の房に入れられるということも信じられなかったが、刑務所内でアイリッシュがここでも差別を受けること、ドラッグまで手に入る自由な雰囲気も初めて見たような気がする。それにも増して、真犯人がわかっても隠し通す警察のふてぶてしさには背筋の凍る思いがした。
 敬虔なカトリック信者である父に反発し続けていた息子ジェリー。大物テロリスト・ジョーの暴力的行為を目の当たりにしたため、顔から険が消え、優しく父に接するようになる成長ぶりが上手く表現されていました。
 政治的な冤罪事件はどこの国にも存在し、自白の強要、陪審員制度、裁判制度までもが虚構であるとしみじみと感じられる良質な社会派映画でした。実話であることの重みはずっと心に残りそうだ。どちらかと言うと、父のエピソードよりは、他の家族や叔母家族に涙しました。

1993年アカデミー賞作品賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、監督賞、脚色賞、編集賞ノミネート
1994年ベルリン国際映画祭金熊賞
その他
(2004.8)

父よ 2001 フランス
セテラ・インターナショナル
MON PERE IL MA SAUVE LA VIE
ストーリー  死刑を宣告された息子マニュの様子を確かめようと、父ジョーは毎日のように刑務所の向かいのビストロに通う。
監督 ジョゼ・ジョヴァンニ
出演 ブリュノ・クレメール ヴァンサン・ルクール ニコラ・アブラハム
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  逃亡中に死亡した兄、賭博師の父、首謀者の叔父サントス。家族の間にも暗い闇が蠢いている。回想シーンが随所に折り込められ、しかも真相には中々届かない。父が賭けで勝った弁護士費用も母が稼いだと嘘をつく・・・しかしギャンブルはやめない。こうして、ぎこちない会話の面会が続く。そして特赦の日が・・・しかし、映画として感動するものではなく、これが実話の自伝であることに感動するのだ。父とのすれ違いのため、愛を素直に伝えられなかったことを映画に託して。
 『穴』についてのナレーションも出てきたが、観てみたくなった。小ネタとして、Aと8のツーペアが強いというルールも興味深い。
(2004.7)

チップス先生さようなら 1969 アメリカ
MGM
GOODBYE, MR. CHIPS
ストーリー  イギリスの田舎町で寄宿学校に勤めるチップス先生は、誠実だが不器用でどこか堅苦しい。そんな彼が、突然舞台の花形女優と結婚することになって、学校は大騒ぎに・・・
監督 ハーバート・ロス
出演 ピーター・オトゥール ペトゥラ・クラーク マイケル・レッドグレーヴ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★
コメント  36歳当時のピーター・オトゥールというのが信じられないくらいの老け役。堅物そうな教師だったのに、キャサリンとの愛が彼を育んだのであろうか、徐々に生徒のウケが変わっていく様。もっと見たかった。なぜだか終盤30分くらいそれが集約されていて、ほとんどが愛の物語と校長職についての“戦い”が多かったような。
 評価の高い作品ではあるけど、一旦校長に選ばれなかったとか、それが一転する様子とか、どこに描かれているのかわからない。1939年のドイツ軍による空襲。ドイツ軍の狙いを見抜いたチッピングが授業を強行するとか、ほんとに教育的にいいものかどうかも・・・
 慰問にでかけたキャサリンが戦争の犠牲になったという知らせを受けたチッピング。さすがに言葉すくなに悲哀の表情を演ずるオトゥールはすごいな。終戦をむかえてからの急展開はいまいちだった。

1969年アカデミー賞主演男優賞、ミュージカル映画音楽賞ノミネート
1969年ゴールデン・グローブ賞男優賞
(2008.6)

血と骨 2004 日本
ザナドゥ
ストーリー  1923年、済州島から出稼ぎのため日本にやってきた金俊平。嫁さえも暴力で手に入れ、かまぼこ工場で儲けた後は金融業を営むことになる。愛人清子には子どもも出来ず、脳腫瘍で倒れてしまうが・・・
監督 崔洋一 原作:梁 石日(ヤン ソギル)
出演 ビートたけし 鈴木京香 新井浩文
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★ ★★ ★★ ★★★★ ★★
コメント  崔監督という人物はイマイチ理解できない。観客を楽しませるという意思は全くなく、単に日本アカデミー賞狙いに来てるとしか思えないのだ。
 原作は読んでいないので、重厚な在日版大河ドラマといった良さも伝わらず、ただ俳優陣の演技の上手さだけが目立っていた。『クイール』の時にも感じたわけのわからない編集と、各エピソードはいいが繋がりが悪い構成だった。
 暴力はいくない!なんてわかりきったテーマにしたかった?それでも、俊平の生き方に憧れる人間が出てきますよ。ほとんど原作者の父親をリアルに描いているのでしょうから、思い切った脚色も出来ないとは思うけど、つまらなく作りすぎじゃないでしょうかね。

2004年日本アカデミー賞主演女優賞、助演男優賞(オダギリ・ジョー)、監督賞
2004年ブルーリボン賞助演男優賞
(2004.11)

地中海殺人事件 1982 イギリス
東宝東和
EVIL UNDER THE SUN
ストーリー  地中海の小島にあるリゾート・ホテルでアリーナという女性が殺された。偶然別の事件で居合わせたポワロが謎を解く・・・
監督 ガイ・ハミルトン
出演 ピーター・ユスティノフ ジェーン・バーキン ダイアナ・リグ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★ ★★★ ★★★
コメント  冒頭ではその別の殺人事件。アリスという女性が殺されたのだが、それが何の説明もされないままリゾート・ホテルでくつろぐ一行が描かれ始める。そのおどろおどろしい映像とは対照的に地中海の美しさと穏やかそうな人間たち。
 コール・ポーターの「ナイト・アンド・デイ」が効果的なBGMとしてつかわれているので、音楽と風景だけでうっとりできる・・・殺人事件が起こったというのに、関係者があまり慌てていないのも気候のせいなのか・・・皆保身のため積極的にアリバイ証明をするところも可笑しい。
 時計と正午を告げる午砲。そして死体の身代わりと目撃者をうまく使うトリック。それほど面白くないのだけど、「証拠がないんだから帰らせてもらう」と犯人が勝利宣言をした後の展開がとても爽快。
 
(2008.8)



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