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私たちの幸せな時間 2006 韓国
デスペラード
OUR HAPPY TIME
ストーリー  裕福な家庭に育った元歌手のムン・ユジュンは3度目の自殺を図る。シスターでもある叔母の提案で、死刑囚の面会という奉仕活動を提案し、チョン・ユンスと面会することになった。
監督 ソン・ヘソン
出演 カン・ドンウォン イ・ナヨン カン・シニル
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★ ★★★ ★★★★ ★★★
コメント  木曜日の10時から13時はハッピータイムです。
 殺人を犯した死刑囚と、彼に対して面会という奉仕活動をする自殺願望の女性のお話。観客の様子をみると、男性客のほうがより多く泣いていたような・・・死刑囚カン・ドンウォンの境遇に共感できる映画です。
 死刑囚の描いた映画では、ラース・フォン・トリアーの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が最も強烈だったように思う。最近では『カポーティ』『白バラの祈り』『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』などと、色んな系統の死刑囚映画があるようです。昔の映画でいえばロバート・ワイズの『私は死にたくない』(58)を筆頭に、冤罪事件についてのものや、ミステリーやサスペンスに分類される作品が多いように思われる。また、日本では何度もリメイクされている『私は貝になりたい』などがあり、命の尊厳にかかわることなので全体的に名作が多いのも事実。この『私たちの幸せの時間』はむしろ『デッドマン・ウォーキング』に近いのかもしれません。
 さすがにラストではカン・ドンウォンの迫真の演技によって“死の恐怖”も感じられるのですが、どちらかといえば厭世的で、死にたいと思ってる主人公。世の中に対する不満や彼自身のメッセージが伝わってこないのです。悔い改めることによって償っても死んだ人は戻ってこない。むしろ宗教的なテーマが強く感じられました。
 物語として、大きく変化するのは、むしろ面会の相手であるムン・ユジュン(イ・ナヨン)の方。彼女自身が15歳のときに経験した辛い過去を死刑囚に告白し、痛みを分かち合える仲となる過程に心揺さぶられるのです。自殺などという馬鹿げた行為を反省し、酷い仕打ちをした者を赦すまでにいたる。ひとりの人間を生かすことができたという点では、死刑囚ユンスの存在も有意義なものだったと言えるのではないでしょうか。
 他人の痛みをわかること、“赦す”という行為など、今日的なテーマを織り交ぜ、死刑囚と自殺願望の女の気持ちがよく伝わってくる映画でした。しかし、命の尊厳や、生きることの大切さという観点でいくと、それほど感銘を受けなかったというのが本音です。むしろ、被害者遺族がユンスに面会したシーンのほうが感動的でした。ここでは泣けたのに・・・
(2007.10)

私のように美しい娘 1972 フランス
ヘラルド
UNE BELLE FILLE COMME MOI
ストーリー  社会学教授プレヴィンの書いた論文「犯罪女性」は出版されなかった。1年前、彼が刑務所で取材したカミーユ
監督 フランソワ・トリュフォー
出演 ベルナテッド・ラフォン アンドレ・デュソリエ シャルル・デネ
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★ ★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★
コメント  最初にインタビューを試みたカミーユ・ブリス夫人。回想録はいきなり大げさなワイヤーアクションでB級コメディ映画の様相を呈していた。
 父親に虐げられた彼女は、父親が納屋の2階に上ったときにハシゴを奪い、彼は落下死した。鑑別所に入れられてすぐに脱走。ヒッチハイクで拾われた男ブリスにガレージに匿われ、そのまま結婚してしまう。2人で家を飛び出し、次から次へと浮気するカミーユ。ある塔から心中しようとして男だけが落下してしまった。しかし、突き落として殺したとして逮捕された彼女の無実を信じ、プレヴィンは撮影した人を探す。
 歌が下手なカミーユだったのに、無罪放免となった後は歌手となった。もうその頃はプレヴィンが彼女に恋をしてしまう。そして義母が死んで(彼女の仕掛けたオーヴンの巧妙な罠)で夫が遺産相続したと大喜び。しかし、ことをはじめようとしていたプレヴィンを気絶させ、今度はプレヴィンがブリスを殺したことにされてしまう・・・
 ベルナッド・ラフォンの魅力全開!おっぱいだけは垂れているが、色気満載。腋毛も剃らずにホルモン放出だ・・・
 トリュフォーはこうしたコメディが一番しっくりくるような気がする。
(2007.2)

私は貝になりたい 2008 日本
東宝
ストーリー  高知の港町で理髪店を営む清水豊松は召集令状を受け取り、中部方面隊に赴き、終戦を迎える。BC級戦犯として裁判にかけられ、死刑囚として巣鴨プリズンに収監される・・・
監督 福澤克雄
出演 中居正弘 仲間由紀恵 柴本幸
音楽 ストーリー 映像・演出 俳優 総合評
★★★★ ★★★★ ★★★★★ ★★★ ★★★★★
コメント  貝になりたい〜♪と歌ったのは前川清
 何故この時期にリメイク作品なんだろう?しかも、何故主演が中居正弘と仲間由紀恵なんだろう?と、アイドルを使った駄目リメイク作品として全く期待もしていなかった。オリジナルも見たことあるし、所ジョージ主演のTVドラマも見たことがあったのですが、それ以上の作品は無理なのではないかとも思っていた。しかし、公式サイトに寄稿している脚本家・橋本忍の序文を読むと、黒澤明に「何かが足りない」と言われたことが貝の澱のように残っていたのだという。
 実際、比較したわけじゃないので、氏の言葉通りに受け取れば、理髪店を営む豊松の悲劇性を増すために大幅に手直ししたリメイクらしいのだ。そして、映画は初となる福澤克雄監督は『金八先生』や『華麗なる一族』というTVドラマの代表作の他に『さとうきび畑の唄』という秀作を手掛けている人。日本が第二次大戦の一方的被害者であるような描き方をせず、戦争そのものの悲惨さを描いている監督だと評価できると思う。今作でも米軍看守のジェラーにその役割を担わせていたように感じました。
 防衛省航空幕僚長であった田母神俊雄が「日本が侵略国家だったことは濡れ衣」だと論文を発表した問題もあって、あの時の戦争は何だったのかと見直すことができるタイムリーな映画でもあったと思います。シビリアンコントロールを無視した軍隊の統帥権については論じてはいないものの、「上官の命令は絶対」「上官の命令は天皇の命令」などとハッキリ台詞に取り入れ、結局貧乏くじを引くのは下っ端の兵隊であると強く訴えてくるのだ。
 最近では小泉尭史監督の『明日への遺言』の公開もあったが、日本軍だけを悪者にするのはおかしいといった主張や、岡田中将の部下を庇うという美談ばかりが目立ってしまい、小難しさも相まって、残念ながら反戦のイメージが残らない作品だった。その点、『私は貝になりたい』リメイク版(橋本忍を称えるなら“完全版”)はわかりやすく、幸せを掴みかけた一般市民が奈落の底へと落とされる戦争の悲劇を徹底して描いているのだ(岡田中将のような役の石坂浩二もいた)。中居の起用にしても、演技力よりもひょうきんなアイドルとしての存在感がより一層悲劇性を増しているのです。思えば、TV版は所ジョージだったし、前出の『さとうきび畑の唄』に至っては明石家さんまだ!
 どうせTVドラマ監督なんだから・・・といった心配も杞憂に終わりました。徹底したロケーションによって描かれた足摺岬以上の壮観な自然、美しさを強調した日本の四季を堪能できたし、不気味なB29の編隊や蒸気機関車の映像。それに、大胆な坊主頭になった中居正弘の終盤の表情が凄い!彼のギラギラと光る眼には相当な撮影のこだわりをうかがい知ることができるのです。演技力云々よりも撮影力のおかげ・・・
(2008.11)



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